2024年1月3日水曜日

「Maestro」見ました

 近所の劇場での公開を待ちきれず、電車でちょっと行ったところの、音のいいことに定評のある映画館さんで見てまいりました、「Maestro」、邦題「マエストロ :その音楽と愛と」。もちろん、このタイトルは直接にはご存知レナード・バーンスタインその人を指すわけだけれど、この映画の内容はフェリシアさんの「女の愛と生涯」ですね。それもいわくつきの、だけど最高の才能、レナード・バーンスタインを愛して結婚し(てしまっ)た女の生涯。そして、レナード・バーンスタインへの「魚に説教する聖アントニウス」。ご覧になられたクラシック音楽好きの方向けの表現ではありますが、あまり説明する気にはなれません。ご容赦ください。


まず、私はバーンスタインに甚大な影響を受けているし、心底尊敬している、ということをまず最初に書いておかないといけないのです。彼の指揮姿をたくさん見て(当時はLD!!)、それでアマチュアながら吹奏楽の指揮をするようになってしまったくらいには、彼に影響されました。生まれが遅かったから彼と個人的に関わる機会もなければ、実演を聴くことさえできませんでしたが、彼は私の先生です。こう断言できます。

そのうえで、言わないといけない。とにかく面倒くさい人なんですよ、レナード・バーンスタイン氏は。才能と魅力がダダ漏れで、しかし抜けてるしなにかゆるい。若き日に指揮者として大活躍の鳥羽口に立つ機会を得ても、ミュージカルで当たりがあっても、妻がいて家族もいるのにボーイフレンドがいて、それでも満ち足りることのない、巨大すぎる器の人。そんな大成功に至る才能に満ちた人が、自らの方向に、内面には自信を持ってないんだからほんとうに扱いに困る。ここの文に(笑)ってつけようかと思ったけれど、きっと近しい人たちは彼との関わりの中でこの上なく楽しい思いをした反面で、凄く苦労されたんだろうな、と、彼についての本を読むだけでも感じていたのです。その在り様が、この映画では嫌になるくらい映像化されていまして。いちおう、何十年来のファンなので、こうしてフェリシアさん視点で彼女が先立つ1978年頃までのバーンスタインと、その後を見せられるのはなんとも、重い。少なくとも、ファンとしては知っていても考えたいことではないもので。そういうところがある人、とよーくわかってるんですけどね。レニーの娘さん、ジェイミーの幼少期じゃあいられない大人の私たちは見なかったことにはできない。本当にね、面倒くさい人、そして最高の音楽家。んもう。

彼が亡くなる数ヶ月前のPMF、このリハーサルの放送を見て感銘を受けていなかったら、多分違う人生を送っただろう、そう思うくらいには影響を受けている自覚があります。


映画の大前提として、彼が最高の音楽家であったことは共通認識となっている、だがこの映画「Maestro」はそれが評伝として、成功した音楽家のキャリアが描かれる作品、ではないのです。グレン・ミラーやベニー・グッドマン、レッド・ニコルズの映画を見るような期待感で劇場に足を運んだり、再生ボタンを押すのは、お勧めしません。人によっては、昔出版されたジョーン・パイザーによる評伝を読んだ時に近い反応を示されることもあるんだろう、と思っています。そんな反応を呼ぶのもまた仕方のない、厄介さんなんです、レニーさんは。それでも、と繰り返すけれど、本当に才能があるし音楽家として本当に努力された人であり、一般的な言い方をするなら間違いなく20世紀最大の音楽家の一人、成功者です。日本では今、かつて大手芸能事務所を率いた人が生前行ったあれこれ(曖昧)で問題視されているけれど、人によっては彼をその同類と見てしまうんだろうな、とも覚悟している、別に私は関係者でもなんでもないのだけれど…それでも、とまた言わないといけない。そういう人を愛して、生涯その「バス」を降りなかった、フェリシアさんの生き方を、そして彼女の目に映るレニーさんを、描いた映画でした。(この記事、実は続きます)

2020年10月12日月曜日

NHK「ベートーベン250」プロジェクト 放送予定(2020年10月・作業中)

こんにちは。千葉です。

10月も数々の番組でベートーヴェンな公共放送、以下にリスト(と気が向いたらコメント)を。進行形で追加していきますので、出遅れた点はご容赦を…

●クラシックカフェ ベートーベン特集(9) 10/1 NHK FM


●第89回日本音楽コンクール 最終予選 10/12~16 NHK FM(うち、ベートーヴェン演奏は10/12、15のみ)

●クラシックカフェ 「ブルックナーの交響曲第9番他」 10/14 NHK FM

●クラシック倶楽部 デニス・マツーエフ ピアノ・リサイタル(10/14)、福間洸太朗 ベートーベンを弾く(10/15)

●ららら♪クラシック 「Road to ベートーベン4 オペラ 不変のメッセージ」 10/16 Eテレ

ここまでの三回は再放送でお送りしてきた「Road to ベートーベン」、新作にして稲垣吾郎さん出演回なのでどうぞご覧ください。…例によって配信ないかもなので、念のため録画など各位ご準備くださいませ。

●クラシックの迷宮 「歌えば、天国!」 10/17 NHK FM

●クラシック音楽館 「ベートーベン特集(2) 革命の作曲家 ベートーベン」 10/18 Eテレ

●プレミアムシアター 「ルツェルン音楽祭2020 ほか」 BSプレミアム 10/18


2020年9月19日土曜日

NHK「ベートーベン250」プロジェクト 放送予定(2020年9月)

 こんにちは。千葉です。

昨日の開幕特番の放送を見て、かなりの番組を使った一大企画だと理解できたNHKの「ベートーベン250」プロジェクト。そういえば昨日の昼にこんなのも放送してましたよ、ええ(残念ながらNHKプラスでの配信はなかった)。
なのですが、今のところその情報をまとめたものがこの「アンバサダーに稲垣吾郎さん!」の記事しかない。今放送している「土曜スタジオパーク」でも番組を紹介しているけれど、私がほしいのは端的に番組情報なんだよ!

と、ないものをただねだっても不毛なので、サクッとまとめてみることにしました。
なお、番組名は放送局表記に従って「ベートーベン」、自分の言葉で書いている部分は「ベートーヴェン」と表記が混在しますがそこはご容赦ください。
さらに、「名曲アルバム」「名曲アルバムプラス」「名曲スケッチ」については割愛します。放送予定はリンク先をご覧ください。
イヴェントなどの告知もここに入れておきます。

●「オーケストラでつなぐ 希望のシンフォニー」
すでに最初の演奏会は終わってしまっていますけれど、国内各地のアンサンブルがベートーヴェンの交響曲+αの演奏を披露する機会を公開収録、後日放送する一連のプロジェクトです。

●「あなたが選ぶベートーベン・ベスト10」
(もしかするとここが本体サイトなのか?)とも思いますが、体裁としては「ベートーベン250」プロジェクトのいち企画であるベスト10の投票ページ、です。11/16までの期間内に、3曲までを選んで投票してください(と公共放送様が申しております)。

なお。お前の更新なんて待っていられるか!俺は自分の部屋に戻る!(それ違う)という方はNHKオンラインの検索窓に「ベートーベン」と入れて、放送予定を確認していただくほうが早いでしょう、当然のことですが。4K8Kは別途確認が必要ですので注意してくださいね(豆知識)。
ではおことわりはここまで。

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●ベートーベン250開幕特番「今こそベートーベン!」 9/18(金) 21:30~/9/19(土) 15:35~ どちらもEテレ

視聴済みなのでかんたんにコメントを。ベートーヴェン役を演じたことでも知られる稲垣吾郎さんが、作曲家として尊敬しかつ指揮者としてフューチャー・オーケストラ・クラシックスと交響曲全集を録音した久石譲さんとそれぞれの視点から語るベートーヴェン像は、学究的ではないけれど広く伝わるものだったのかな、と。NHKプラスでの配信がないのは残念でしたが、舞台映像を豊富に使った結果なのかなあ…とかこの辺はちょっと歯がゆいです。

●名演奏ライブラリー ▽ウィーンの名ピアニスト パウル・バドゥラ・スコダ 9/20(日) 9:00~ NHK FM

番組ではスコダがフォルテピアノで演奏したベートーヴェンのピアノ・ソナタ第九番 Op.14-1が放送されます。

●×(かける)クラシック ▽第19駅 グルメ×クラシック(3) 9/20(日) 14:00~/9/21(月) 7:25~ NHK FM

放送予定曲にはベートーヴェンはなく、平野レミさんのお話でベートーヴェンの話題が出る模様。そうそう、最近聴くようになった「ディスカバー・ビートルズ」、月末担当はレミさんのお子さんだし(←言い方!トライセラトップスのヴォーカル、和田昌と紹介しましょう)、その奥方は最近再放送されているらしい某ドラマの野田恵さんですよね。うん、ご縁ありそう。

●クラシック音楽館 ベートーベン特集(1) 人間・ベートーベン 9/20(日) 21:00~ Eテレ

稲垣吾郎さん出演の「クラシック音楽館」。ちょっと自分で書いてみて不思議な違和感がありますね(笑)。
「交響曲第3番を題材に」というその内容を番組表からチェックすると、マリス・ヤンソンスが東京で披露したバイエルン放送交響楽団とのチクルスからの映像を軸にピアノ曲もはさみつつ「人間・ベートーベン」を紐解く内容になる模様です。
なお、稲垣吾郎さん出演の「クラシック音楽館」は三回の予定です。


●クラシック倶楽部 西村尚也&アンドレア・バッケッティ デュオリサイタル 9/22(火・祝) 5:00~ BSP

東海中学校・高等学校講堂で収録」とあったので一瞬(学校コンサートかな)なんて思ったのですがさにあらず。登録文化財の昭和初期建築なのだとか。勉強になりました。
番組ではヴァイオリン・ソナタ第五番、いわゆる「春」が放送されます。


●まろのSP日記 第23集 ベートーベン特集 9/22(火・祝) 9:05~ NHK ラジオ第一

気象情報、ニュースをはさみながら午前中をまるまる使って放送されるあたりに、我らが放送交響楽団の偉容を見ました(嘘です)。実はこの日、昼からは「今日は一日ショパン三昧」で、その後にはいつものように「ベストオブクラシック」(選でタリス・スコラーズの演奏会)と、クラシック三昧のNHK FMなのでした。
ちなみに「三昧」、司会に林田理沙アナウンサーのお名前がありますね…テレビのクラシック音楽番組への登板が待たれる彼女の大仕事、お時間ある方はぜひ。

「三昧」には川口成彦さん、反田恭平さんも出演されます(そっちを告知しようよ私…ってか本筋…まろさんごめんなさい)。

●クラシックカフェ  ▽ベートーベンのピアノ・ソナタ「月光」他 9/23(水) 14:00~ /10/1(木) 7:25~ NHK FM
おなじみの二時間番組、前半がハイドンからベートーヴェンへ、そして後半がドビュッシーとブリテンという二部的な構成のようです。ベートーヴェン作品はコヴァセヴィチによるソナタ Op.27-2です。


BS8Kなんてどこで見られるんだ!というお気持ちの方もいらっしゃるかとは思いますが、NHKの施設などで受信公開をしていますので、お近くなら、時間の都合がつくなら、どうでしょうか(強くは押せない)。
この演奏は全集収録の時期のもの、BS8K放送開始以来のおなじみコンテンツですね。

ベストセレクションじゃないんですベトセレクションなんです。ベトさんメイン回を以下三回のセレクションとして放送、なのです。わかる方にだけ伝わってください(笑)。

9月9日(水)「闇、その向こう」/9月16日(水)「ちがいのわかるおとこ」/9月23日(水) 「宇宙からのアンコール」


三か月かけてワンテーマを掘り下げる「カルチャーラジオ」、このテーマでは平野昭先生が出演されています。納得。
…ただし、7月からシリーズが始まっていますのでこの番組はもうゴールが近いのです。一週間のみではありますが聴き逃し配信も利用できますので、よろしければぜひ。


数少ない今年の収録映像、英国ロイヤル・オペラの「フィデリオ」もBS8Kで放送されます。
なお、このオペラハウスのことなので、上演作についてはYouTubeでもたくさん発信してくれていますよ、例によって。


●ららら♪クラシック 「Road to ベートーベン(1) 楽聖を育てた街 ウィーン」 9/25(金) 21:00~ /(木) 10:25~ Eテレ(再放送情報は未確認)

こちらの番組では四回シリーズでRoad to ベートーヴェン再放送。ここでも平野先生、また納得。です。


再放送ではありますが、シカゴ交響楽団からベルリン・フィルへと華麗すぎる飛躍を決めたフルーティストのリサイタル。ベートーヴェンの作品はアンコールで一曲だけ、ですけど(笑)。


先日「クラシック音楽館」でも一部放送されたこの「第九」も放送開始以来の推しコンテンツ、に感じますね。ユニテルがヴィデオではなくフィルム収録してくれたおかげで、その映像が本来の持つポテンシャルを知る機会が今訪れている、わけですね。そう考える私はこの高精細化には賛成しています。でも、当たり外れはあるかな…(カラヤン美学は恩恵が少なかった、と感じました)

一気に9月分を拾ってみましたが、これを通しでやったら駄目ですね、記事長すぎ。まずは9月分としてこれを公開しておきます。ではまた。

2020年7月15日水曜日

かってに予告編 ~東京フィルハーモニー交響楽団 7月定期演奏会

●東京フィルハーモニー交響楽団 7月定期演奏会

2020年7月
  15日(水) 19:00開演 会場:サントリーホール 大ホール
  17日(金) 19:00開演 会場:東京オペラシティ コンサートホール
  19日(日) 15:00開演 会場:Bunkamuraオーチャードホール

指揮:佐渡裕
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

ベートーヴェン:
  「コリオラン」序曲
  交響曲第七番 イ長調 Op.92

6月になって、東京フィルハーモニー交響楽団はようやく演奏会を開催できた。都のガイドラインによる制約から来場者を減らし、また来日不可能のため指揮者を変更し、それらに伴ってプログラムを変更し、という困難を乗り越えての演奏会の模様は、MBS系列で放送された「情熱大陸」でご覧になった方も多かったことと思う。
…使われなかったようなのでここで書いておくけれど、オペラシティでの公演の後来場者としてコメントを求められた私は「このような素晴らしいことができる楽団に舞台がないのは不幸なことだし、それを私たちが楽しめないのも本当に不幸なことだ」「以前とは違う状況だけれど、なんとかやっていけるようにできることをして共に音楽を続けたい」といった話を求められるままにしました。(ニュースのヒマネタなら数秒しか使えないだろうに、ずいぶんと聞き出すなあ)と思いながら答えた映像が世界に流れなくてよかった(いや大事なのはそこじゃない)。

さて。昨今は「禍福はあざなえる縄の如し」と思わされることばかりで、いいニュースには必ずと言っていいほどに残念なお知らせもついてくる。6月の定期に来場した方はもれなく見ただろう東京フィルの今後の定期演奏会の内容変更は、演奏会の再開を手放しで喜んでばかりもいられない、そんな気持ちも同時に喚起した。これを書いている今日、さらに残念なことに8月定期として開催予定だった定期演奏会(本来は今年3月予定)の中止も発表されている。つまり、プレトニョフと東京フィルによる演奏会は2020年には行われない。「わが祖国」全曲演奏会自体は2021年3月に再延期されるわけだが、これでまた一つの舞台が失われたことが惜しまれる。
(ここの部分、本当にわかりにくい書き方で申し訳ないのだけれど、このわかりにくさが今の状況なのだと思ってもらいたくてつい)

定期演奏会の改組は残念なお知らせだけれど、それを経なければ前に進めない、そんな困難な前提と向き合うのが2020年の現実なのだ、とうそぶいて深呼吸して、あらためて明るいニュースである開催される7月定期に目を向けよう。

本来なら4月に意欲的なバーンスタイン・プログラムで登場するはずだった佐渡裕が、この困難の中で東京フィルの指揮台に帰ってくることになった。演奏時間こそ長くはなかったけれど、さすがに舞台転換に声楽に、と今はまだクリアできない条件を伴ったそのプログラムは披露されない(いつの日か実現されますように)。その代わりに、生誕250年を迎えたベートーヴェンの二曲による約一時間のプログラムで定期演奏会は開催される。悲劇的な序曲、そして舞踏の高揚を窮め尽くす交響曲、佐渡裕と東京フィルはどう聴かせてくれるだろうか。今や希少な機会となった演奏会、好演を期待したい。

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今回も都のガイドラインに従っているため、短めの演奏時間に加え来場者を絞っての開催となるため、聴きたくても聴きに行けない、という方が多いだろうことは本当に残念なことだし、また、最近になっての感染拡大に見える状況も心配だ(心配と自衛くらいしか、一個人にはできないのが歯がゆい)。
そんなご時世なのだから、行き帰りも含めて十分な配慮をして、事後にもトラブルなく演奏会が成功裏に終わるよう努める。皆様御存知の通り、”新しい時代”の演奏会の聴衆にはこの配慮が求められています。状況は厳しいですけれどやれることをしましょう、そして音楽がライヴで聴ける可能性をつなぎましょう。以上、最後の段はただの聴き手の私からのお願いでした。

2020年6月23日火曜日

公演再開のためのキープディスタンス・エクスペリエンス 資料編

こんにちは。千葉です。

先般ミューザ川崎シンフォニーホールで開催された「公演再開のための キープディスタンスコンサート」について、オペラ・エクスプレス様に寄稿しています。よろしければご覧ください、あわせてミューザ川崎シンフォニーホールのサイトもご覧になるのがよりよい見方ではないかな、と思います。
中川英二郎氏は、本来なら今月はこのランチタイムコンサートに加えて「スライド・モンスターズ」のツアーでもミューザ川崎シンフォニーホールに登場する予定でした。来年に延期となってしまいましたけれど、様々なアンサンブルでそれぞれに個性的なサウンドを聴かせる中川英二郎氏の帰還を、楽しみに待ちたいと思います。



さてこの日の試演会、ミューザ川崎シンフォニーホールはどのような準備をして臨んだのかと気になる方も少なくないのでは、と想像します。そこで、私が会場で思いつくままに撮った写真を以下に貼ります。ご参考になりましたら幸いです。
(今後、テキストは更新予定です)

まずは入場前。

奴らは相変わらずチャラい。それがむしろ安心感を誘うのはなんでしょうね(笑)。ちなみにヴィジュアル下部のMASK、これは「Music Aventure Summer Kawasaki」です。ぜひお見知りおきを。

そしてホワイエ。

ベンチも間を空けて使うよう案内があります。
客席に入るとこんな感じです。

一席空けて座るよう案内してあり、この紙は下の写真のように貼られていました。この日は2ブロックしか使っていませんが、全体ともなるとけっこうな作業です。

さらに場内を巡回している案内の方は、これを示して歩いていました。

いろいろ変わってはいるけれど、ステージはいつものミューザ川崎シンフォニーホール。帰ってきました。

この写真でもピアニストとバンジョーの席が離れているのがわかりますし、トロンボーンのスタンド近くには水抜き用の受け皿(状のもの)が見て取れます。
なおここで一応書いておきますが、一般に「つば抜き」と言われがちな管楽器の水抜きですが、あれはほとんどは結露による水滴ですね。この日も中川氏は演奏開始前、つまり音を出していない時間帯に結露した水分を排出していることがよくわかりました。

さて終演後の意見交換会の模様から。一枚目に指写っててごめんなさい(笑)。


終演後のトリオからもコメント。聴衆の前で演奏できてうれしい、とのお言葉がありましたがこちらこそ「目の前で演奏してもらえて、それに拍手が贈れて本当にうれしい」と強く感じましたよ。

ロビーにはこんな掲示が。ミューザ川崎シンフォニーホールのホームページにあるもの同様とは思いますがご参考まで。

チラシ掲示のところでは、公演の度重なる変更にこのような形で対応していました。

以上がこの日私が気づいた諸々のこと、でした。ヤツも皆さんの来場を待っていると思います。状況が整った方から、十分な準備をした上で会いに行ってやってくださいませ。
最後に。
ビルも少々さま変わり。スポーツ用品店が撤退したスペースは、今こうなってます。

でかいコンビニです。次回来場の際にご活用ください。

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では失礼して、ミューザ川崎シンフォニーホールの新たな船出に乾杯(お酒飲みたいだけ)。また会場でお会いしましょう。

2020年6月21日日曜日

かってに予告編 ~東京フィルハーモニー交響楽団 6月定期演奏会

●東京フィルハーモニー交響楽団 6月定期演奏会

2020年6月
  21日(日)15:00開演 会場:Bunkamura オーチャードホール
  22日(月)19:00開演 会場:東京オペラシティコンサートホール
  24日(水)19:00開演 会場:サントリーホール 大ホール

指揮:渡邊一正(東京フィル・レジデントコンダクター)
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

ロッシーニ:歌劇「セビリアの理髪師」序曲
ドヴォルザーク:交響曲第九番 ホ短調 Op.95 『新世界より』

※当初予定のミハイル・プレトニョフ指揮による公演から内容が変更されました

私が東京フィルの公演について、恒例の「かってに予告編」を書くのもほぼ四ヶ月ぶりだ。基本的に聴きに行く予定のコンサートについて、自主的に(きれいな言い方)ご紹介させていただくものだから、要はあのチョン・ミョンフンとの「カルメン」から東京フィルの公演に行けていない、というわけだ。
そのコンサートからの遠ざかりが自分由来であれば仕方のないことだ、実際に地方に住んでいた時期にはコンサートなんてまったく行けなかった。それでも、数多くの演奏会が開かれているのであればいつか放送なり録音なりで触れる機会も出てくるだろう、そう思って耐えることもできた。しかし2020年前半のこの空白はそうではない。日本一多忙な、とも言われる東京フィルハーモニー交響楽団の演奏会が、まったくなかったのだ。3月に予定されていたプレトニョフとの「わが祖国」は8月に延期開催される予定だが、4月に予定されていた佐渡裕によるバーンスタイン・プログラムは公演中止となった。演奏機会が本当に希少な作品を取り上げるはずだったのに。

そしてこの6月定期も、プレトニョフとの演奏会のはずのところ、マエストロ来日不可能のため、またCovid-19対応のガイドラインに沿った形への変更を行った上でなんとか開催される運びとなったわけである。その経緯や対応については、オーケストラからのお知らせを見てほしい。

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ここで私は「自分が伺う予定の定期演奏会」の話しかしていないから、「公演の空白と言っても3月と4月の二つだけ」のように見えてしまったなら、それは大変に申し訳ないが誤解だ。「日本一多忙な」と言われる東京フィルは伊達にそう呼ばれているわけではなく、自身の主催公演に加えてバレエやオペラでの演奏、そして数多くの委託公演に参加しているのだから。皆様も最近よく目にする、アーティストやコンテンツの名を冠した「オーケストラ・コンサート」「シネマコンサート」の存在はご存知だろう、それらの数多くに登場する東京フィルハーモニー交響楽団がこの4ヶ月の間に失った公演の数は相当のものだろうと、聞くまでもなく容易に想像がつく。その影響を直視するのが憚られて、調べることさえも気後れする。
その間に私にできたのはせいぜいが首席指揮者アンドレア・バッティストーニとの新譜「幻想交響曲/舞楽」をダウンロードすることくらいだったので、その無力感たるや。いやそんなことより、音楽の可能性を開花させる機会を奪われた音楽家の皆様の胸中如何ばかりか、そして演奏団体の存続は大丈夫なのか。心配しかできないのがもう、なんとも…


新譜レヴュー、近日お出しします。筆が遅くて申し訳ない。
現時点では「良い録音でこれらの作品が聴けることは幸いである、そしてこれが日本のオーケストラによるものなのだからますます喜ばしい」とのみ。

湿っぽい話が長くて申し訳ありません。この機会を逃すとこの話をしておくタイミングがないのです。演奏活動が部分的にではあっても再開されるから、やっとこの話ができる。私はそう考えています。
幸いなことに、これまでに世界各地の演奏団体の試みが報告されており、合奏については比較的安全に実施できそうな見通しがあるように私見している※。国からの緊急事態宣言が解除された今、演奏会を開くのは自然なことだ。なにせ音楽家には演奏したい思いがありそのための高度に専門的な能力がある。そして私たち聴き手もいつまでも再生環境に左右される配信で満足してはいられない。目の前で生まれる音に出会うために演奏会に足を運ぶことの楽しさを知ってしまえば、演奏会が開かれていない日々がこれ以上続くことを受け入れられましょうか。

※声楽、とくに合唱については東京二期会が7月に演奏会を行うという朗報もあったけれど、ポジティヴな見通しを否定する情報もあり、私については判断を留保させていただきたい。

上述のとおり、演奏会は予定を変更して開催される。プレトニョフが来られない以上、シチェドリンによる「カルメン」とチャイコフスキーの組曲という、彼独自のプログラムは変えるしかないことを残念に思う気持ちがないわけではないけれど、活動再開にあたってこの変更はありなのではないか、とも感じる。かつてないほどの空白を埋めるのに、気心の知れたマエストロを招くのは自然なことだ。そして曲目を見れば、冒頭はオペラを得意とする東京フィルからの久しぶりのご挨拶であり、劇場への愛を示す「セビリアの理髪師」序曲。そして変わってしまった新しい世界への第一歩としてのドヴォルザークの交響曲。うん、いいと思います。

それは私だって「新世界」がアメリカ合衆国を指すことやら民謡や音階を部分的に採用していること等など、もちろん存じておりますが(あやしい)、創作を終えて作者からも時代からも独立した作品にはこういうめぐり合わせの妙、よくあるものです。今このときに体験することでこういう感じ方をする(してしまう)のが受容する側に与えられた自由のひとつなのだから、そこは積極的に楽しめる方を選ぼう、私のスタンスはそういう傾向がありますね…(今気づいたのか)。私のことはさておいて。
いよいよ、6/21から東京フィルハーモニー交響楽団は演奏会を再開します。この日付を埋められる日が来たことを喜び、今度は再びの空白とならぬことをお祈りして本稿を終えましょう。

そうそう、Covid-19の流行のあと、演奏会は音楽家と主催者と、そして聴衆が協力しないと実施すら難しい時代になりました。来場予定の皆様は、必ず団からの対策案内を熟読して、体調に気をつけて会場に向かいましょうね。私からもお願いします。


こうした活動もぜひご覧ください。

2020年3月25日水曜日

夏の主役は君だ! ~フェスタサマーミューザKAWASAKI 2020 ラインナップ発表

※変更後のプログラム発表を受けて、この記事の改稿ではなく追加で文章を書くことにします。しばらくは古い情報をそのまま載せていることになりますので、チケット入手のための情報などはミューザ川崎シンフォニーホールのホームページをご覧ください。

2020年3月25日(水)、ついに「フェスタサマーミューザKAWASAKI 2020」(以下サマーミューザ)のラインナップが発表された。今年は現今の状況に鑑み恒例の記者発表は行われなかったけれど、そのラインナップはこれから夏まで音楽ファンの注目を集め続けていくことだろう。サマーミューザがあるから、失われた”2020”にはならない、ラインナップを読み込んで私はそう確信した。

>フェスタサマーミューザKAWASAKI2020 公式サイト

今年は7月23日(木・祝)に開幕し、8月10日(月・祝)まで19日間にわたって数多くのコンサートが連日開催される(7/27、8/3は演奏会なし)。例年通り、首都圏のオーケストラによる特色を活かした公演の数々の饗宴、ホールアドバイザーによる趣向を凝らした企画、そしてゲストの登場と、サマーミューザは今年も”毎日でも通いたい”魅力的なプログラムを用意してきた。昨年初の首都圏外から参加した仙台フィルハーモニー管弦楽団に続いて、今年は群馬交響楽団がサマーミューザに登場する(8/4)ことも注目を集めるだろう。

ではそのプログラムの魅力を読み解こう。
今年のサマーミューザは、一つの軸として生誕250年を迎えたベートーヴェンを据えた。N響、群響、東京フィル、新日本フィルがミューザでの公演で取り上げるのに加え、「出張サマーミューザ@しんゆり」は両日ともが「オール・ベートーヴェン・プログラム」だ。オーケストラ公演に通いつめれば交響曲第五番から第九番、ヴァイオリン協奏曲にピアノ協奏曲(一、四、五の三曲を一公演で!)、そしてめったに演奏されない三重協奏曲までが披露される。さらに小川典子が「ピアノフェスタ」で取り上げる「悲愴」ソナタもあるのだから、存分にベートーヴェンの音楽を楽しめようというものだ。

多彩な独奏者が登場するのも今年のサマーミューザの魅力の一つだ。定番のヴァイオリン、ピアノも名手たちが揃うのだが、ギターにサクソフォン、ハープに「第九」の独唱陣と、公演に彩りを添えるだけには収まらない音楽家たちが連日のように登場してくれる。

個別に気になる公演をあげるなら、”夏祭りだから”とばかりに凝りまくった企画を披露してくれる下野竜也と読響+反田・務川(7/29)、ミューザ初登場となるアンドレア・バッティストーニと東京フィル(8/2)、近年クラシックへの本格的なアプローチが際立つ久石譲と新日本フィル(8/4)、飯守泰次郎と本格的なプログラムを披露する東京シティ・フィル(8/7)、あたりは聴き逃がせないと感じる。

仙台フィルハーモニー管弦楽団に続いて招かれた群馬交響楽団は、映画「ここに泉あり」でも印象的に用いられた「第九」でミューザデビューを飾ってくれることとなった。新本拠地・高崎芸術劇場がお披露目されたばかりの群響が、群馬交響楽団合唱団、独唱陣とともに聴かせてくれる”真夏の第九”、酷暑に負けぬ熱演に期待したいところだ。

また、今年のサマーミューザでも、ジャズ企画は継続される。国府弘子が小川典子とのコラボ(7/24)、ベースの井上陽介らとのコラボ(7/26)で活躍してくれるのは心強い。

アウトリーチ公演は今年も充実しており、「こどもフェスタ」として開催されるホールアドバイザーの小川典子による「イッツ・ア・ピアノワールド」(7/24)、かわさきジュニアオーケストラ発表会(8/6)の二公演、そして市内の音楽大学による演奏会(洗足学園の恒例”バレエとのコラボ”公演は7/31、女性が輝く昭和音大のコンサートは8/5)は廉価で楽しめるコンサートとして今年も好評で迎えられるだろう。無料企画の「音と科学の実験室 夏ラボ!」や、「若手演奏家支援事業2020 ミニコンサート」も開催されるので、夏休みの親子には気軽にミューザに足を運んでみてほしい。

そうそう、今年のサマーミューザのタイトルは「みんな大好き夏音(サマーミューザ)」である。少しゆるいこのテーマに、新ヴィジュアルのヌケ感はもしかすると(川の向こうで世界的イヴェント開催中だし)なんて衒いがあったのかな、とも思える。だがプログラムを、出演者を見れば堂々たる本格的音楽祭として、この夏の主役になってしまうのは確実である(市民の贔屓目はあるにしても)。チャラくてもいい、ガチでもいい、存分に音楽を楽しむ夏の到来を待とうではないか。

(バッハさん以外は半笑い…性格悪そう、なんて言いませんよ、ええ)

最後に残しておいたこれも決して忘れてはならない、夏祭りの焦点のひとつである。ご存知ミューザ川崎シンフォニーホールを本拠地に活躍する我らが東京交響楽団だ。東響は今年も開幕公演、出張サマーミューザ、そしてフィナーレと活躍してくれる。
開幕公演は定期公演の同プログラムがすでにチケットが入手困難となっていたノット&東響によるマーラーの第五番(!!!!)である。各位、ご用意はよろしいか。
そしてフィナーレでは、先日の配信でも東響と見事にスウィングしてみせた原田慶太楼が登場する。東響が誇る名手景山梨乃によるグリエールの協奏曲、長身を活かしてダイナミックな指揮姿が魅力の原田による「シェエラザード」ももちろん注目なのだが、今回はその間に置かれるかわさき=ドレイク・ミュージックによる”新作”も見逃してはならない。メインの「シェエラザード」をモティーフとして披露される即興は、その創造のプロセスから興味深いものとなるだろう。※
前述したとおり@しんゆりは秋山指揮、オール・ベートーヴェンによる堂々たるプログラムと、どのコンサートも今の東響の充実を存分に示してくれることだろう。

※残念なことだが、昨今の状況によってフィナーレコンサートにイギリスの「ドレイク・ミュージック」の参加はなくなった。きっと次の機会がある、と思いたいが…

そうそう、これはミューザと東響の仕込んだ小ネタだと思うのだが、パンフレットをくまなく見てほしい。下段のアイコン説明に「祝!ベートーヴェン生誕250年」に並んで「祝!マーラー生誕160年」が用意されているのだが、実は今回のサマーミューザでマーラーを披露するのはノット&東響だけ、なのである(笑)。ラッヘンマンとマーラー、ノット&東響のケミストリーへの期待を込めた、ミューザからのちょっとした遊びを私はとてもうれしく拝見した次第である。

そしてこれはサマーミューザの直後となるのだが、3/28に予定されていた定期演奏会は8/13にミューザ川崎シンフォニーホールで開催される、と昨日発表された。今まさに心待ちにされている”復活”の時として、フェスタサマーミューザが無事開催されることを、私は心から祈っている。