2016年5月13日金曜日

書きました:ラザレフ&日本フィルがロシア音楽”以外”でも魅せる

こんにちは。千葉です。

最近、自分としては珍しく忙しいので前説なしです。世界的運動会については言及しないし見ないし、なので特に言うこともありませんし。

ではSPICEに寄稿させていただいた記事の紹介です。

●ラザレフ&日本フィルがロシア音楽”以外”でも魅せる

千葉がアレクサンドル・ラザレフを尊敬していることは前から書いてきました(最近は聴きに伺えなくて途絶えがちでしたが…)。言葉に還元されない濃厚な音楽については全幅の信頼をおいておりますゆえ、プログラムを見ればこういう形ででも紹介させていただきたくなる、というわけでございまして。いま現在来日中のサー・サイモンさんについても同様ですけど、その話はすると負け惜しみっぽくなるので勘弁してください(泣)。

*************

で、ラザレフと日本フィルに戻ります。
記事でも触れました、杉並公会堂での公開リハーサルに伺ってきたんですよ昨日。公開リハーサルは第四、第五楽章を仕上げて、第三楽章を一度通して少し直したところで時間切れ、という感じでございました。スコア持参で伺ったかいのある、充実したリハーサルでしたねえ…

……で、ですね。ラザレフと日本フィルに、どんな「幻想」を予想されてますか皆さん。へへへへへへ。

これはねえ、想像なんかしてもどうにもならないです。ヒントを一つだけ出すならば「お手元のスコアを確認してください」だけです。なんならIMSLPにもありますので、気になる方はぜひご確認を。
これは千葉が以前から感じていたマエストロのアプローチの特徴どおりではあるのだけれど、随所で驚かされたりつい笑わされてしまったりで、全曲をコンサートで聴いたら作品についての認識も改まりそうです。

もうひとつヒントというかなんというか。「日本フィルの幻想」って先入観は捨ててください。ミュンシュも小林研一郎も(敬称略)、一度忘れて作品そのものを受け取る貴重な機会になります。断言。

今晩の大宮ソニックシティから三日間ありますので、都合のつく会場でぜひお聴きください、と、記事を書いて公開リハーサルを経てより強く申し上げます。

ということで今回はご案内のみ。ではまた。

※追記。もう大宮の公演が終わったのでネタを割ります。
今回、幻想交響曲をラザレフはものすごく「楽譜通り」に演奏しています。それが結果として多くの音楽的アイディアを浮かび上がらせるという、実に見事な成果につながっているところがたまりません。

公開リハーサルで、最初に第四楽章を通した時にはその意図に気が付かなかったのですが、いつものように手際の良い直しを始めた途端、「そういうことか」と思い当たりました。

楽譜をお持ちの方は確認してほしいのですが、第四楽章の冒頭から見ていって、クレッシェンドはどこに、なんのパートにあるでしょう?はい、正解は練習番号50の二小節前、ティンパニのパートと、同じく練習番号50のアウフタクトの裏拍、シンコペーションを演奏しているパート群ですね。
それが何を意味するかといえば、「そこまでは楽器は増えるけれどクレッシェンドはしていない」、音量は上がっていてもいいけれど、それぞれの楽器は最初に指示されたピアニッシモのままで演奏されるべき、という読みの可能性なんです。ラザレフは今回そう読み取り、オーケストラに徹底させました。その結果、音楽はなかなか方向性を示さずに聴き手を焦らし、練習番号50前後で一気に強音を叩きつけられて驚かされるわけです。

これはあくまでも一例で(同様の処理は第五楽章冒頭でも行われていました)、随所で「楽譜はこうなっているだろう?」という徹底をしてみせたこの演奏は、きっとオーケストラには挑戦だっただろうな、と想像しています。なにせ、これまでの演奏経験を一度なかったことにして楽譜に向き合う必要があったはずなのですから。個人的には、今回のアプローチは名画の洗浄にも似たものであるように感じています。…もっとも、まだ千葉はコンサートでの演奏を聴いていないんですけどね(笑)、日曜に聴かせていただいたらまた何か書きますね(今度は別記事で)。

0 件のコメント:

コメントを投稿