2016年11月3日木曜日

シーズン4に向かって、ノット&東響(その一)

こんにちは。千葉です。
訳あって、いやなくてもお仕事募集中応相談です。気軽にご連絡くださいませ。というのを毎回書くことにしました。うるさくてすみません。

おそらく、いま前説を書くべきことがある、書いておかなければ後悔するとわかっているのだけれど、それの出し方はまた別途考えます。それとは別に、今お出ししておかないと後悔するものを記事として出しちゃいますね。

10月20日からまる一週間+2日にわたって行われた欧州ツアーの壮行会を兼ねた、ジョナサン・ノット&東京交響楽団『シーズン4』 2017/2018年シーズンラインナップ記者会見の模様を全二回で公開します。

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2016年10月11日、ミューザ川崎シンフォニーホールのステージを会場としてジョナサン・ノット&東京交響楽団『シーズン4』 2017/2018年シーズンラインナップ記者会見が多くの報道陣、そして聴衆として熱心に東響を支えるサポーターを招いて開催された。ジョナサン・ノット音楽監督の長期契約更新の初年度、そして創立70周年記念イヴェントの中でも頂点となるだろう欧州ツアーへの壮行会としての意味合いもあって注目を集めた会見ではオーケストラから、そしてジョナサン・ノットから熱いメッセージが発信された。
福田紀彦川崎市長からのメッセージ、大野順二東京交響楽団専務理事・楽団長からの挨拶に続いて行われた、ジョナサン・ノット音楽監督からの、シーズン4への熱いプレゼンテーションを紹介しよう。

シーズンプログラムを手に、存分に語るノット監督

●音楽作りについて
今日はようこそお越しくださいました。昨晩は第4シーズンについてお話するためにプログラムを見直して、「こんなことも計画したか」「こんな素晴らしい作品を取りあげるのか」とと驚いたりしましていた(笑)。
では、まずここでの音楽づくりについてお話したいと思います。私は、本物の音楽作りは即興性の中にあると考えています。演奏者と聴衆との、今そのときにしかない特別な時間、その時にできる演奏を大事にしたいのです。だからリハーサルと演奏会では同じことをしようとは思わないし、実際できないでしょう。もちろん演奏のコンセプトや方向性はリハーサルで作り上げたます、ですがその上で演奏会ではリスクを取って表現をより深く、個人的で、自由なものにしたい。演奏のたびに私たちが違うように、コンサートごとに聴衆の反応も変わります。それは我々の表現が皆さんに伝わっているからなのではないでしょうか。

●欧州ツアーについて
私は以前から、ぜひ東京交響楽団とツアーを行いたいと考えていました。オーケストラが行う国際的なツアーには、三つの重要なポイントがあると思います。
まず、ツアーの際にオーケストラが集団として同じ行動をとることは、メンバー同士を音楽的にも、社会的な集団としてもより強く結びつけてくれるのです。
そして二つ目は、特に私個人にとってですが、同じプログラムを繰返し演奏できることが重要です。いつでも演奏会のために創り上げた演奏を、100回でも演奏したいと思っているのですから!(笑)繰返し演奏することで、表現をより深めていくことができるのは本当に喜ばしいことです。
最後に、音楽は言葉では通じ合えない人間同士をも結びつけることができるものだ、ということを音楽家が体感できる貴重な機会だからです。ツアーでは、言葉が通じない経験とともに音楽によって交流できるという認識が同時に訪れ、それは音楽家一人ひとりに「自分は何故音楽家になろうと思ったのか」という原点に立ち戻って考えさせることになります。また、音楽を通じて、音楽を言葉では十分交流できないかもしれない聴衆と共有することで個々人を、引いては世界をも変えることができる、その意味で音楽家は世界大使になれると思っているのです。

●プログラムについて
では来シーズンのプログラムについてお話しましょう。素晴らしい作品、プログラムが並んでいて私自身も見直して圧倒される思いでしたが、今日は私が指揮する六つの演奏会についてお話します。
一つの作品の中にも”旅”が、ストーリーがあり、作品を集めて編んだプログラム全体にもそれがあります。これらの演奏会を経験することで、私とオーケストラは互いに理解を深めていけるでしょう。将来的には一人の作曲家によるプログラム、たとえばベートーヴェンやマーラー、R.シュトラウスなども取り上げたいとは思いますが、いまはテーマを考えていろいろな作曲家の作品を組合せてプログラムを提示したいですね。

1.5月定期&川崎定期
ブルックナーの第五番という素晴らしい作品を取り上げます。この作品を初めて聴いたときにはまったくいいと思わなかったのですが、そんなはずはないと考えてスコアを読みました。たしかにこの作品は長いし、そして複雑に構成された難しい作品ですが、非常に美しい。モーツァルトと並べるとそれぞれの個性が際立つでしょう。

2.7月定期&川崎定期
素晴らしい東響コーラスとともにマーラーの交響曲第二番を演奏します。ブルックナーと同様、マーラーの作品もそれ自体がひとつの長い”旅”のようなものですが、今回はその前に現代日本を代表する作曲家、細川俊夫の作品を演奏します。

3.10月定期
このプログラムでは、以前から重要だと考えている新ウィーン楽派の作品の作品から、シェーンベルクの大規模な変奏曲、Op.31を演奏するとまず決めました。この作品は1928年の作品ですが、ラヴェルの「ボレロ」も同年の作なのです。まったく性格の異なる二作品ですが、これを並べると”変奏曲”というテーマができあがります。
シェーンベルクの作品は多くの技法、アイディアが盛り込まれた豊かな作品ですが、無調だから聴きやすいとは言えません。そこで変奏曲の音列に用いられたバッハの名による音形(註:B-A-C-Hを音名として)を用いたリストの変奏曲を冒頭に置くことで、よりシェーンベルクを楽しんでもらえると思います。そこにラフマニノフを加えて「変奏曲」の一夜はできあがりです。

4.12月定期&新潟定期
先ほどのコンサートが「変奏曲の一夜」なら、リゲティのホルン協奏曲(「ハンブルク協奏曲」)ではじまるこのコンサートは「ホルンの一夜」ということになるでしょうか。
先だってBBCミュージック・マガジンのアンケートで「音楽史上もっとも重要な作品」を問われて、私が選んだのがベートーヴェンの交響曲第三番です。彼の作品の中でも最もモダンでスリリングで、興奮させられる作品でしょう。第三番でこれまでの交響曲の三倍も長い、そして三本のホルンが活躍します。”三づくし”の作品ですが、(聖なる三位一体ではなく)民主主義的なあり方に近い作品だと考えています。
そしてホルン協奏曲を取り上げるリゲティは知的な作曲家ですね、どの作品も明瞭なコンセプト、アイディアを持つ、どの作品にも魂を感じさせる、現代の音楽に親しんでもらうための導入には最適な作曲家ではないでしょうか。
このホルンに焦点を当てたプログラムにもう一曲、と考えた時にシューマンを選びました。今回はジャーマン・ホルンサウンドというホルン四重奏を招き、彼らとはリゲティとシューマンで共演します。

5.10月オペラシティ定期
古典派作品を集めたプログラムです。ここで演奏するハイドンの第八六番とモーツァルトの第三九番の交響曲は作曲時期が一年半しか隔たっていない、ほぼ同時期の作曲ですから二人の作曲家の特徴も聴き比べていただけますし、どのように交響曲というものが作られてきたのかがうかがえるでしょう。
(※モーツァルト・マチネではハイドンは演奏されません)

6.5月オペラシティ定期
バートウィッスルの「パニック」がプロムスで初演されたときにはスキャンダルになったものです、冒険的で斬新な手法による作品ですから。サクソフォン、ドラムが活躍するこの作品とともに、サクソフォンを活用した音楽として、バーナード・ハーマンによる映画「タクシー・ドライバー」のための音楽を持ってきました。
そしてベートーヴェンの第八番は、大好きなのですがプログラムに上手く入れにくい作品でもあります。
個人的なことですが、なぜか自分の中でこの作品は東京と結びついています。かつて東京に滞在していたある夜、深夜の二時すぎに目が覚めてしまって仕方がないから勉強でもしようかと思い立った時に選んだのがこの曲でした。録音も持っていたはず、と探して聴きはじめて終楽章までくるころにはすっかり興奮してしまって、スコアを探して勉強していたら朝になっていました(笑)。この作品は人間であることの喜びが表現された作品だと感じています。

最後になりますが、今日会見に来てくださった皆さん、そしてコンサートにいらっしゃる皆さんに感謝を申し上げます。皆さまからの反応で私たちの演奏、プログラムを楽しんでくださっていることが伝わり、そんな経験を重ねるごとに日本での、今回上でのコンサートが心地よくなっています。これからもよろしくお願いします。

いかがだろうか、今シーズンも公演を重ねるごとに関係が深まりより親密な演奏を繰り広げるジョナサン・ノットと東京交響楽団のシーズン4、そしてその先の未来がますます楽しみになったのは私だけではないだろう。

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ここまでが前半です。明日の夜にでも、事務局の皆さまからのコメント、ノット監督が質疑に答えた部分を次の記事でお出ししますね。

欧州ツアーの模様については、東京交響楽団のFacebookで写真が数多く見られますし、楽員の皆さまもTwitterなどで報告していらっしゃいましたのでそのあたりを探されるといろいろなものが見つかるかと。
個人的には各地の評がどう出るか注目していたのですが、ネットでは今のところ最終公演ドルトムントの、本当に聴いたのか疑問になる微妙なものが一つ見つかっただけです。あの演奏で「正確だが感情的に弱い」ならどんな演奏すりゃあいいのさ、と思わざるをえないっすわー(自分の耳を疑う気はない←割と傲慢じゃのう自分)。そんなわけだからリンクも貼りません、あれを読んでも仕方がない。

で、最後になぜ急ぎ記事を公開するかと言いますればですね、本日東京交響楽団の帰国後最初の演奏会が行われるからです。ミューザ川崎シンフォニーホールで14時開演の名曲全集、指揮はシモーネ・ヤングです。詳しくはリンク先で。さて日本からの”大使”として様々な経験をしてきただろうオーケストラはどう変わっているでしょう、ということを確認するその前に、ぜひノット監督が今回のツアーに込めた思いの程を知っておいていただけると何かと伝わるものもあるのではないか、と考えました次第です。
なおノット監督が次に登場するのは12月、そこで演奏するプログラムと今月のシモーネ・ヤングのプログラムは両方聴いたほうがよさそうです、と感じた話が明日の分に入ってきます。あと、「コジ・ファン・トゥッテ」は大好きな作品なので何かしらの取材等をします。という予告込みの本日分はまずここまで。ではまた、ごきげんよう。

※ただのオタクの駄文でしかないとご批判をいただき、内容を観ていただけない可能性に気づきましたので改題しました。ご指摘に感謝します

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