2017年5月31日水曜日

パーヴォ・ヤルヴィ、2019/20シーズンからチューリヒ・トーンハレ管弦楽団のシェフに

こんにちは。千葉です。ニュースです。

●Neue Künstlerische Leitung an der Tonhalle Zürich
Paavo Järvi wird Chefdirigent der Tonhalle

現在リオネル・ブランギエが務めるポストに、パーヴォ・ヤルヴィが就任する、というニュースです。スイスを代表する常設オーケストラ、チューリヒ・トーンハレ管弦楽団の首席指揮者、芸術監督に2019/2020シーズンから着任します。まずは5年契約とのこと。

>オーケストラからのリリースはこちらで:PDFファイルが開きます(ドイツ語)

近年デイヴィッド・ジンマンが数多くのレコーディングでその名を高めたスイス東部のオーケストラは、山田和樹が首席客演指揮者を務めていることでご存じの方も多いでしょう。ドイツ語圏を代表するオーケストラは、若手のブランギエからパーヴォさんへのスイッチを、以前から検討/期待されていたフシがあります>こんな記事を見つけました(最初の記事と同じ、チューリヒ新報昨年12月の記事)。
1986年生まれの俊英からパーヴォさんへのシフトとなると、お若いマエストロには厳しい判定があったのかな…などと余計な心配もしてしまいますが、世界各地のオーケストラと共演している彼なのでこれは杞憂のたぐいでありましょう(N響に客演したときの反応はどうだったっけ、などと思いつつ)。

****************

パーヴォさんならいろいろな団体から声かかっちゃうよね当然かもね、と思いつつ。私がこのニュースで一番面白く感じたのは「またノット監督とかぶるのかよ!」ということでした。
我らがジョナサン・ノット東京交響楽団音楽監督は、2016年からスイス・ロマンド管弦楽団の首席指揮者も務めています。チューリヒがスイスの東側、ドイツ語圏の代表ならスイス・ロマンド管は西側、フランス語圏の代表と言えましょう(本拠地ジュネーヴは、チューリヒやベルンよりむしろリヨンのほうが近いです←いまグーグルマップで確認した)。
なお肝心の演奏ですが、配信で聴く感じでは力強さと明るさでは向こうが勝るかな、とも思うけれど、東京交響楽団だって監督とのコミュニケーションの密度、サウンドの柔らかさでは勝ってる、気がします。配信と実演とで比べても仕方ないんですけど、いちおうね(笑)。そんな「東京とスイスで活躍するマエストロ」ポジションをパーヴォさんも得る、という風にこのニュースを見てしまったんですよね、私。

イギリスに生まれてフランクフルトからアンサンブル・アンテルコンタンポラン、バンベルクときて現在のポジションにあるノット監督と、エストニアに生まれてアメリカで成長しシンシナティからフランクフルト、パリを経由して現在に至るパーヴォさん。かたやオペラハウスから現在に至り、かたや先日初めてオペラ上演を体験したばかりの生粋のシンフォニー指揮者と、違う経路で指揮者として活躍する二人が、微妙に交錯しながら近いポジションを得るこの感じ、いったいお二人にはどんな縁がございますやら。

なお、このお二人は今年「ドン・ジョヴァンニ」で演目かぶりします、というのは既報のとおりです。いやはや、縁があるんですよやっぱり(笑)。

ということで後半ただのエッセイみたいになりましたがご案内はこのへんで。ではまた、ごきげんよう。

※余談。
最近、サイトウ・キネン・オーケストラやN響、そして今年は読響にも登場するファビオ・ルイージですが、彼もそのキャリアにおいてスイス・ロマンド管弦楽団、チューリヒ歌劇場とスイスのオーケストラ、劇場で活躍しています。そして近年の日本との縁、これは何かのフラグでしょうか?(笑)

2017年5月30日火曜日

読みました:ナオミ・クライン「ショック・ドクトリン」

こんにちは。千葉です。
読み終わった本の話です、とはいえ割と前に読んだものですが。




あとがきの引用ってのは如何にも「読んでないけど書評するぜ」みたいで好きじゃないんですが(笑)、上下巻700ページにも及ぶ本書について一番詳しい人のまとめですから、ここではささやかな禁を破って紹介させていただきますよ。訳者あとがき、685ページから。

ショック・ドクトリンが実際に適用された例として、クラインはピノチェト将軍によるチリのクーデターをはじめとする七〇年代のラテンアメリカ諸国から、イギリスのサッチャー政権、ポーランドの「連帯」、中国の天安門事件、アパルトヘイト後の南アフリカ、ソ連崩壊、アジア経済危機、9・11後のアメリカとイラク戦争、スマトラ沖津波、ハリケーン・カトリーナ、セキュリティー国家としてのイスラエル……と過去三五年の現代史を総なめにするごとく、広範囲にわたるケースを検証していく。(後略、引用終わり)

何か大きな出来事が起きると、そのタイミングに合わせて「本当は議論が必要なのだけれど、今その議論には時間が割きにくい」大きいテーマが政治スケジュールに登ることがあります。ほら、例えて言うならあれですよ、言葉は悪いけど火事場泥棒。
それをただの巡り合わせと見ることもいいだろうし、本書が指摘する「ショック・ドクトリン」として実施されていることもあるでしょう。それぞれの可能性を認識した上で、私は本書の指摘を”陰謀論”と簡単に退けることには同意しません。
というより、ショック・ドクトリンを実施できる側は、この言葉を知っていなくともこの手法を採用することがあるからです。反対者の思考停止の隙を突く、というのは常套手段であり、時として詐欺師の手法ではありますが気づかれなければ効果的なものでもあるわけです。ただ、それができるのは体力資力人材に余裕があるサイドだけだから(何か事が起きた時、被害にあっている当事者はもちろん、被害者の手助けをする人たちも時間や資力などリソースを奪われるわけですから)、変事にあっても粛々と物事をすすめる人たちに対しては安定感より警戒感をこそ持つべきだと考えるわけです。

強力なエンジンは魅力的です、それはかつて未来派が憧れた時代から変わってない。でも個々人が守られるためにはブレーキのほうがよっぽど重要です。「ショック・ドクトリン」はブレーキを無視して全開で走るエンジンにすべてを委ねてしまう契機としての惨事、という視点をいまは歴史となった具体的事例で示してくれていますが、それはいつでもどこでもありうるものだという認識を持つことには意味があるだろう。その認識を新たにしたことでした。



****************

以下短くない余談です。この本を読んでいたので、この映画が上映前から気になっていたんですよ。



今はもうレンタル店でも旧作扱いでしょうから、気になる方にはぜひ見ていただきたいと思います。映画のタイトルはシンプルこの上ない、「NO」です。

この映画は実話を元に作られており、その舞台は1988年のチリ、悪名高きピノチェト時代の終わり頃のこと。もちろん、現実にはピノチェトの時代は続いていてこの映画に描かれた出来事の最中には”末期”という認識は持てないのだから、今この時をなんとか生き延びなければならない、それがまずは大前提。
ピノチェト政権の信任継続を問う国民投票が近く実施されることが決まり「投票までの27日間、政権支持派「YES」と反対派「NO」それぞれに1日15分のPR ができるテレビ放送枠が許され」(映画公式サイト「ストーリー」より)、さて反対派は如何に戦ったか、というのがこの映画のドラマです。主人公は広告クリエーターのレネ。彼にはこの選挙が茶番にしか思えず、始めはまったく気乗りしなかったのだが…とお話は進みます。

ピノチェト政権は再選を阻まれてチリは民政に移行して現在があるのだからこの選挙で反対派は勝利するのですけれど(酷いネタバレ←えっと)、条件はどう考えてもいいものではない。強権ではあるけれど長く続いてきた政府には相応の裏打ちがあるのだから、それに対抗するのは容易ではありません。
投票に際して正面からテーマを際立たせて訴える?それとも?そのアプローチがどういうものだったかはぜひ映画で見ていただくとして、これは私には選べない手段ではあるけどなるほどな、と思わされた次第でした。
もちろん、映画という形で表現された以上、フィクションはフィクションなのだけれど(厳密に言うならばドキュメンタリーもルポルタージュも誰かの編集が入ってしまう時点で”生”の事実ではありえないのですが)、チリという国が冷戦の終わりにピノチェト軍政を終わらせることができたことの意味を考える契機にはなるのではないかと。

…個人的な感慨も少し。私は残念ながら広告屋でも活動家でもないけれど(笑)、そう遠くない時期にこの映画が描くような投票をさせられるだろう、と感じているものですからまったくもって他人事とは思えないものでしたよ。
チリではいちおうのフェアな選挙であるための担保があったけれど(広告時間の制限はなかなかフェアなものだと思います)、今私たちが住んでいるこの国で行われる可能性が高い国民投票は、どうも広告についての規定が相当に緩いものになっているようですから、さてどうなるでしょう。TVの広告や番組、新聞の紙面のように一方通行のメディアに片方の見解だけが載り(豊富な資金を集めてくるでしょうからね)、反論の声はなかなか届かない。そんなディストピア的熱狂が予想できてしまって、私はあまり明るい見通しは持てないでいます。
こういう言い方はフェアではないなと思うのだけれど、私はもうそんなに若くないので国がどう変わってしまってもそれまでに生きた時間のほうが長かった、ということになるでしょう。ボンクラでもなんとか生きてこられたいわゆる戦後日本を私はそれほど否定しないのだけれど、その体制は終わる可能性が見えてきています。その先にあるのがなんなのか、想像はつくけどそれが現実になることのインパクトや体験させられる事ごとはその日が来ないとわからない。私は来てほしくないと思う未来の姿はピノチェト時代のそれにも似ているように思うし、もっと率直にそっくりなものは少し歴史を振り返れば、ね。という。未だ来ていないものについてうだうだ言っても仕方ないのだけれど、私としては現在の延長がそう見えるな、という感慨を抱かせる読書と映画鑑賞でした。というお話。

辛気臭い感じの話が長くなったので最後に一曲どうぞ。


…まあ、この曲もピノチェト時代に書かれた曲なんですけどね、と言いつついい加減長いからこれでおしまい。
ではまた、ごきげんよう。

2017年5月29日月曜日

佐藤琢磨、インディ500で優勝!!!

こんにちは。千葉です。

…まさかまたモータスポーツの記事を書く日が来ようとは。F1が有料放送/配信だけになってしまってテンションも下がった私としては「もう何かの機会がないとモティヴェーション湧かないよな」と感じていました。ですがこれは書かなくちゃいけない、これこそがその「何かの機会」です。

●Sato Wins 101st Running of the Indianapolis 500 presented by PennGrade Motor Oil

日本語だと専門雑誌などのチャンネルがいいんでしょうけど、まあ公式サイトをご覧くださいませ。佐藤琢磨、101回目のインディ500で勝ちました!!おめでとう!!!



レースデイのハイライトが公式から出ました。ぜひ。

もういっちょ公式情報で。


おめでとうおめでとう、もう言葉がないっす。



この会見の日本語記事は、オートスポーツWebでお読みいただけます。

※追記。インディ500のウィナーが特別な存在になることは知っていたつもりですが、ここまでか…と感じられるこの数日です。その模様は、彼が今年から所属しているアンドレッティ・オートスポーツのTwitterアカウントをフォローしておけばよーくわかりますので、ぜひ

さすがに鈴鹿のスクールから、とは言わないけど英国F3時代から情報ベースで追って、F1時代には鈴鹿でスパで応援してきたドライヴァが、インディカー・シリーズに参戦して一度は掴みかけた栄冠を、こうして現実につかむ瞬間が訪れるのは嬉しいものです。

今回のレースについては、ペンスキーのエリオ・カストロネベスとのタイトなバトルに勝利したことも大きいポイントです。最強チームに速さで勝利する、これを実現するためには今シーズンのアンドレッティ・オートスポーツへの移籍が絶対に必要だった。彼の胆力を見込んでくれたA.J.フォイトのもとでの経験ももちろん大きかったでしょう、でもBARホンダ以来の強いチームで走れる機会を、最初に訪れた最高の舞台で活かした佐藤琢磨に私から贈れるのは拍手と賞賛だけです。本当におめでとう。


嗚呼AJさん本当に有難うありがとう。

なお、細かいこともいろいろ書けるんですけど(最初のスティントから赤旗中断まではストリーミングで見てましたし、オーヴァルレースの楽しみ方はそれなりに知っているつもり)、長々と書いても興ざめにございましょう、説明もすごく大量にしなくちゃいけませんし。
いつかまたオーヴァルレースを日本で見られますように。

****************

そして佐藤琢磨以外の話もひとつ。
私がライヴ配信を見続けることをあきらめるきっかけとなった(眠るための言い訳、ともいいます)、ジェイ・ハワードとスコット・ディクソンのクラッシュですが。あれは、現在のシャシーでなければスコット・ディクソンの命を奪っていたクラッシュだと思います。
かつて大活躍したダン・ウェルドンのレース中の死を受けて「それまで以上により安全なシャシーを」と作り出されたDW12は、デビュー以来ドライヴァたちの命を守ってくれています。今回のクラッシュでまた、その思いを強くした私は、自分の自転車をDWと命名しました(ちっちゃい話ですみません)。

いやあ、こういうことも起きるものなのだ、という喜びを噛み締めつつこのあたりで。
ではまた、ごきげんよう。

※追記。インディカー・シリーズは、そのレースをフルサイズで公式配信してくれます。4時間以上の長丁場ではございますが、これで皆さんもその過酷さを体験できますよ!(笑)
冗談はさておいて、オーヴァルレースの楽しみ方を一つお教えしましょう。まず「追い抜きの仕掛けはワンアクションでは終わらない」ということを注意してみること、です。
超高速で巡行しているマシン同士で追い抜きを仕掛けるためのやり方はいろいろありますが、ロードコースでのそれのようにブレーキング勝負で前に出る、ようなものにはなりません。先行車両の動きを伺い、少しでも”理想的でない動き”をした後に訪れるだろうチャンスを見逃さず、可能な限りスリップストリームを利用してはじめて仕掛けることができるんです、このレースでは。だから佐藤琢磨の前の車の動きをちゃんと見ておくと”なぜ今のオーヴァテイクは成功したか”がわかるかな、と。
御託はこのへんで、皆さんも楽しんで!スタートユアエンジンズ!ですよ!




2017年度武満徹作曲賞決定

こんにちは。千葉です。
審査員にハインツ・ホリガーを迎えて開催された恒例の作曲コンクールのリザルトについてご案内します。

●2017年度 武満徹作曲賞 決定!

以下公式サイトより、書式のみ少々整えて引用します。

●本選演奏会 2017年5月28日(日) 会場:東京オペラシティ コンサートホール
指揮:カチュン・ウォン
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

受賞者
第1位 坂田直樹(日本)「組み合わされた風景」
第2位 ジフア・タン(マレーシア)「at the still point」/アンナキアーラ・ゲッダ(イタリア)「NOWHERE」/シュテファン・バイヤー(ドイツ)「私はかつて人肉を口にしたことはない」

講評によれば「この2位のなかには順位はございません、全員同等の2位」とのことでしたので、その旨明示するよう整えました(なおリンク先にはホリガーによる長い講評が載っていますので興味のある方はそちらをご覧ください)。

なお、本選演奏会はNHK-FMの「現代の音楽」で放送される予定、とのことです。

以上ご案内でした。ではまた、ごきげんよう。

2017年5月28日日曜日

5/28(29)「ベルリン・フィル ヨーロッパ・コンサート2017 IN パフォス/グリゴーリ・ソコロフ ピアノ・リサイタル」放送

こんにちは。千葉です。
28日深夜24:00~(29日未明0:00~)からのNHK BS、プレミアムシアターのご案内です。

●ドキュメンタリー  ヨーロッパ・コンサートの舞台  世界遺産パフォス(キプロス)/ベルリン・フィル ヨーロッパ・コンサート2017 IN パフォス/グリゴーリ・ソコロフ ピアノ・リサイタル

前半は毎年恒例、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の創設記念日(5月1日)に欧州各地で開催しているヨーロッパコンサートの放送です。今年は指揮にマリス・ヤンソンスを迎え、キプロス島のパフォスで開催されました。



曲目も書いておきましょう、協奏曲のソリストは”クラリネット一家”と言いたくなるオッテンザマー家の次男にしてベルリン・フィルの首席奏者アンドレアスです。

ウェーバー:
  歌劇「オベロン」序曲
  クラリネット協奏曲第一番 ヘ短調 Op.73
ドヴォルザーク:交響曲第八番 ト長調 Op.88

そして後半に放送されるのは2015年にフランスのプロヴァンスで開催されたグリゴーリ・ソコロフのピアノ・リサイタル。バッハからドビュッシーまで、幅広い時代の作品で構成されたプログラムですね。


こちらは2014年のリサイタルから、曲は違うけれど今回放送されるリサイタルでもプログラムに入れられているシューベルトです。

そんなわけで、五月の最終週はコンサートですよ、というご案内でした。ではまた、ごきげんよう。

※追記。
コンサートは楽章間拍手がデフォルトの、和やかな感じで開催されていました。ヤンソンスは聴きどころを上手く聴かせて楽しませることに長けていらっしゃいますから、この演奏会も楽しめるものでした。アンドレアスのソロも、アンコールまで含めて同じ方向を向いていたと思います。


2017年5月27日土曜日

タオルミーナG7でチョン・ミョンフン指揮スカラ・フィル演奏

こんにちは。千葉です。
ニュースでチラチラと見せられてちょっと欲求不満が昂じてしまったので(笑)ここにまとめておきます。
タオルミーナでのG7首脳会合での、チョン・ミョンフン指揮スカラ・フィルハーモニー管弦楽団の演奏についてです。演奏の模様は公式に配信されていますが、文字情報がなかったので以下にまとめました。

●#G7Taormina I Leader al Teatro Greco per il concerto dell’Orchestra Filarmonica della Scala(Palazzo ChigiのYouTubeチャンネルより)


プログラムは以下のとおり。

プッチーニ:歌劇「蝶々夫人」より 第二幕第二部冒頭
ヴェルディ:
  歌劇「椿姫」第一幕への前奏曲
  歌劇「運命の力」序曲
ロッシーニ:
  歌劇「アルジェのイタリア女」序曲
  歌劇「ウィリアム・テル」序曲
(マエストロからの挨拶/イタリア語)
アンコール
マスカーニ:歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲

どれもこれも、本当に続きが聴きたくなる演奏ばかりで、昨年の「蝶々夫人」の感動を思い出したりした次第です。今度は「椿姫」やってくれませんかマエストロ。ここではできなかっただろう「シチリアの晩鐘」でもいいです(作品の内容的に、政治がらみの場所ではちょっと無理)。
カメラワークはプレイヤーに寄った感じでの収録が多いので、私としては”「奏者はいい、指揮者を映せ!」と思った”こと、”ときどき回線の関係が音が歪む、マイクに何かがぶつかるノイズがある”ということを報告させていただきます。

首脳の中では、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏会中継でときどきそのお姿を見かけるアンゲラ・メルケルの笑顔が印象的ですね、さすがにわかっていらっしゃる感がありました。

では簡単なまとめは以上です。ではまた、ごきげんよう。

英国ロイヤル・オペラハウス シネマシーズン「蝶々夫人」5/26より上映

こんにちは。千葉です。
5月26日から各地で上映開始されるオペラのご案内です。遅れてすみません…

●英国ロイヤル・オペラハウス シネマシーズン2016/2017「蝶々夫人」





まだまだたくさんの関連動画がロイヤル・オペラハウスのYouTube公式チャンネルにはあるんですけど、とりあえずここまでにします。

ここ最近多くの注目の舞台が上演、放送されてきた「蝶々夫人」に、今度は音楽監督アントニオ・パッパーノが指揮するロイヤル・オペラハウスの舞台が加わります。「エルモネラ・ヤオの歌唱を聴いて、これを上演しないと」と即断したと語っていた注目の舞台、ぜひご覧ください。

すこし最近の上演や上映、放送を振り返ってみましょうか。
昨年チョン・ミョンフンが演奏会形式で東京フィルと聴かせた「蝶々夫人」はセミステージ形式だからこそ、悲劇そのものを美しく抽出してくれたような舞台でした(感想はこちらに)
そして笈田ヨシの演出が話題となった公演は各地での巡演、放送ともに注目されましたね。この作品が持つ本来の厳しさを戯画化せずに描き出す、辛く哀しく、なにより切実な舞台でした。
リッカルド・シャイーがミラノ・スカラ座に復活させた初演版は、現在一般に上演される版以上に蝶々さんの置かれた厳しい状況を描くもので、衣装や演出ともあいまって人によっては直視が辛くさえ思えたことでしょう。ピンカートンが去った後に”カリカチュアライズされた白塗りで和装”の蝶々さん、精神状態は如何許かと心配で心配で見通すのが非常に辛いものでした。
それぞれにプッチーニの美しい音楽の魅力を存分に示しながら、それぞれの視点で作品をより切実に描くものだった、と感じました。

ではロイヤル・オペラハウスの舞台はどうだったか。モーシュ・ライザーの舞台は幕末日本を記号的な衣装やメイクを使いながらもオリエンタリズムに傾きすぎない、実に妥当で美しい舞台でした。
※もう少しあとで追記します

ではまた、ごきげんよう。

2017年5月26日金曜日

5/27「佐渡裕が解き明かす ミュージカル「ウエストサイドストーリー」秘話」放送

こんにちは。千葉です。
テレビ番組のご案内。バーンスタイン生誕100年に向かって、こういう番組も増えるでしょうか。

●世界的指揮者・佐渡裕が解き明かす ミュージカル「ウエストサイドストーリー」秘話 ~ぺこ&りゅうちぇるも大興奮SP!~
※まだBS-TBSのサイトではいま現在、まだ番組情報がありません。確認でき次第更新します。→残念ながら放送局のサイトではとくにページの用意がないようです。以上で更新終了します。
なお情報元はこちら。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000497.000012949.html

7月にシアターオーブで開催されるミュージカル「ウェスト・サイド・ストーリー」の前に、佐渡裕がぺこ&りゅうちぇる(よく知らない方々ですごめんなさいほんとすみません)にいろいろ教えてくれるのでしょう(現時点では情報が少なすぎてタイトルを少し入れ替えただけになっちゃった)。

レナード・バーンスタインの作曲、スティーヴン・ソンドハイムの作詞、アーサー・ローレンツの台本(そしてオリジナルは原案も担当したジェローム・ロビンスの振付)によるミュージカルの傑作、また多くの方が楽しまれる機会となるわけで、喜ばしいことです(私はバーンスタインのファンなので)。



※追記。この作品をご存じない方に向けた番組として、構成されていました。佐渡裕による作品紹介セクションと、ぺこ&りゅうちぇるによるシアターオーブ紹介とミュージカルの魅力セクション、そして有村昆による作品が与えた影響セクションはそれぞれ独立していて、番組タイトルから予想したものとはちょっと違う構成でしたが、この作品をまったくご存じない方にも魅力が伝わるように、という思いは感じました。
もしこの番組もご覧になっていなくて、何故かここにたどり着かれた方がいらっしゃいましたら映画版の冒頭だけでもご覧ください。音楽もアレンジされているし、演出も舞台のそれとは違いますが雰囲気は伝わりますので。



****************

1918年生まれのバーンスタインの生誕100年を迎えるにあたり、たとえばニューヨーク・フィルハーモニックの来シーズンにはこんな企画が用意されています。



他にもロンドン響がラトルとの最初のシーズンにマリン・オールソップを招いて集中的に取り上げる予定を発表済みですし、他にも多くの団体が20世紀を代表する音楽家の生誕100年を祝おうと様々な企画を用意しています。

それに先駆ける形で、大阪のフェスティバルホールでは7月に井上道義の指揮、大阪フィルハーモニー交響楽団ほか多くのキャストによる「ミサ曲」(1971)が上演されるのは注目ですよ。内面のドラマとして描き出されるミサはバーンスタイン自身の告解の場に居合わせるような独特な作品です。当時の最先端技術を駆使し、ジャンルの制約も何もない作品は当時賛否両論ありながらもレコーディングなどで受容されて、最近では録音も少なくなくリリースされています。ちなみに初演のトレイラーがありました(公式かどうか追いきれないので、何か問題がありましたら削除します)。



”映画「ヘアー」の世界ですね”と言わざるをえないヴィジュアルに、ついこのバージョンで全編見てみたくなりますね(笑)。
それはさておいて、バーンスタインが生涯テーマの一つとした”信仰の危機”が軸のこの作品、現代の日本でこの作品がどのように示され、どのように受容されるものかはなかなかに気になるところです。マエストロ・ミッキーのコメントなどもフェスティバルホールのサイトにはありますので、気になる方はぜひチェックしてみてくださいませ。
>大阪国際フェスティバルの「ミサ」ページ

なお豆知識を一つ。この作品の、典礼文以外の詞をバーンスタインと協力して書いたのは、ミュージカル「ウィキッド」などでも知られるスティーヴン・シュワルツ(Stephen Schwarz)ですよ。

ちょっと情報不足から後半が長くなっちゃって、何の記事か自分でも微妙な感じですが(おいおい)、ひとまずここでおしまいとします。ではまた、ごきげんよう。


2017年5月25日木曜日

読みました:辻昌宏『オペラは脚本(リブレット)から』

こんにちは。千葉です。
これも読み終わった本のご紹介です。

●辻昌宏『オペラは脚本(リブレット)から』


以下に目次を引用します。

第1章 脚本(リブレット)が先か、音楽が先か
第2章 脚本に介入するプッチーニ —《ラ・ボエーム》とイッリカ、ジャコーザ
第3章 検閲と闘うヴェルディ —《リゴレット》とピアーヴェ
第4章 ロマン派を予言するドニゼッティ —《愛の妙薬》とロマーニ
第5章 性別を超えるロッシーニ —《チェネレントラ》とフェッレッティ
第6章 挑発を愉しむモーツァルト —《フィガロの結婚》とダ・ポンテ
終章 こうしてオペラは始まった

時代を遡る形で、古くて新しいテーマ「音楽が先か、言葉が先か」を実作にしたがって考える一冊です。プッチーニは「マノン・レスコー」で出会ったルイージ・イッリカとジュゼッペ・ジャコーザとの協力関係を、ヴェルディでは検閲との戦いを「リゴレット」を中心に、…とそれぞれに軸となる作品の例に基づいて台本と作曲の関係を探っていく一冊はなかなかにスリリングです。創作のプロセスが持つ緊張感が持つ独特の面白さは、作曲家と作家の間の往復書簡の形などで知られているところですが(高名なところではリヒャルト・シュトラウスとフーゴ・フォン・ホーフマンスタールのそれは書籍としても知られていますね)、本書は事実関係を整理してコンパクトに教えてくれます。



原作、題材の選択や、作曲との順番などの進め方、それだけでも興味深いのですが、作品を構成するテクストがどのような困難に向き合って生み出されるのか、という創作のドラマとしても面白いですし、それが時代によってどう違うものかと比較するのも興味深いものと思いますので、気になった方にはぜひご一読をお薦めしたく。

なお、モーツァルト以前となると今度はリブレッティスト優位の時代となるのですが、そのあたりの話はまた勉強したときにでも。
ではまた、ごきげんよう。

2017年5月22日月曜日

読みました:西澤保彦「さよならは明日の約束」

こんにちは。千葉です。
これまた読んだ本の話です。

●西澤保彦「さよならは明日の約束」


タック&タカチシリーズが一段落して、また水玉螢之丞さんが亡くなられてチョーモンインシリーズが再開される気配がなくなって(これは仕方がないと思う、さすがに…)、それでも多作な西澤保彦さんは次々新作を発表されていて、頭が下がるばかりです。
ひところ読書に時間を割けないために、その多作についていけていなかった私としてはゆるゆると追いつきたく思う所存であります。追いつけたそのころにはほら、タック&タカチシリーズの新作も出るかもしれないし(淡い期待)。

そう思って読んでみた本書は、西澤保彦らしくジジくさい男子と個性的な女子のコンビによるアームチェア・ディテクティブものです。ヒロインはアクティヴなキャラクターに設定されているから出不精だったりするわけではなく(笑)、この短編集で取り上げられる謎が過去に属するものだから、です。一冊の本を契機として見出される日常の謎に、西澤保彦ならではの対話を通じて迫っていくスタイルは、過去作を知らずとも充分に楽しめるものでしょう。二作目からお話の舞台となる喫茶店はどう考えても商いとして立ち行かない感じなのだけれど、マスターが語る過去はキィになっているし、彼が醸すひなびた感じがあればこその本作なので、そこはまあ、ということで(笑)。
詳しくは書きませんが、「男はつらいよ」シリーズや、サザンオールスターズの変遷について感じるのに近いものを感じて、「ああもうタック&タカチものは読めないかもなあ」と思ってしまったことは最後に書いておきます。

なお。もし初めて西澤保彦作品を読むという方にアドヴァイスするならば、珍名に早く慣れてしまえば何も難しいことはないよ、ということでしょうか。喫茶店のマスター梶本さんは割と普通の名字だけれど、他の登場人物は私にとっては馴染みのないものが多くてそこだけちょっと難儀しました(読み慣れていてもそうなんです、連作ではあるけれどシリーズとして構成されているわけではないので愛読者メリットみたいなものはありません)。気軽に是非読み始めて、名字に引っかかってもずんずん読み進めちゃえば楽しく読めることは保証しますよ。
そうそう、西澤保彦読者にはより面白い趣向が本作にはひとつ仕込まれています。最初期の作品をリサイクルして別の可能性を探られちゃうと、読み返したくなっちゃうじゃないですか「解体諸因」。

もっと西澤保彦作品が人気でないかなあ、映像化されないかなあって長年思っている私としては、近年のフジテレビによるドラマ化路線には期待せざるをえないし、もしくは「すべてがFになる」「六花の勇者」、「氷菓」や「ハルチカ」などミステリのアニメ化も増えている印象があるから夢を見ちゃうんですよねえ、「七回死んだ男」の映像化を。どこかやってくれませんか、あの偉大な一作を。ぜひ。

というリクエストを最後に瓶に入れてネットの海に流しておしまい。
ではまた、ごきげんよう。


2017年5月21日日曜日

5/21(22)「英国ロイヤル・バレエ『アナスタシア』/パリ・オペラ座バレエ『レイン』」放送

こんにちは。千葉です。
こちらも放送のご案内、21日 24:20~(22日 0:20~)からのNHK BSプレミアムシアターも、「クラシック音楽館」に引き続くかのようにバレエです。

●英国ロイヤル・バレエ『アナスタシア』/パリ・オペラ座バレエ『レイン』

前半は「ロイヤル・オペラハウス シネマシーズン」でつい先日上映されたばかりの「アナスタシア」です。トレイラーはこちら。


ロイヤル・オペラハウスのYouTube公式チャンネルではトレイラー以外にも多くの動画が公開されていますので、放送の前後にでも併せてお楽しみになるとよろしいかなと。
「ロシア革命に消えたロマノフ王朝の皇女アナスタシアは、実は生き延びていた」という伝説をもとに編まれた物語は、1991年からの科学的調査の結果事実としては否定されていますが、それでも数多くの映画や小説で、そしてこのバレエで親しまれていくことでしょう。
そうですね、ロシア革命合わせでエイゼンシュテインの映画も見るといいかもしれませんね、「十月」とか「戦艦ポチョムキン」とか(ゴリ押し)。

さて気を取り直して。後半はスティーヴ・ライヒの「18人の音楽家のための音楽」による、アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケル振付のバレエ「レイン」です。再放送ですね。



前半はチャイコフスキーとマルティヌーを、後半はスティーヴ・ライヒと音楽的にも楽しめる舞台ですので、クラシック音楽ファンにもオススメです。…深夜の放送でミニマルはいろいろと厳しいので、録画をオススメいたしますけれど(笑)。

ということでご案内はおしまい。ではまた、ごきげんよう。


5/21「NHKバレエの饗宴2017」放送

こんにちは。千葉です。
21日の21時から放送のEテレ「クラシック音楽館」はこちらです。

●NHKバレエの饗宴2017

この日はプレミアムシアターと併せてバレエの日、ということですね。

まずクラシック音楽館は、今年の4月8日の開催された「NHKバレエの饗宴2017」が放送されます。井上バレエ団貞松・浜田バレエ団新国立劇場バレエ団牧阿佐美バレヱ団が登場する豪華な公演の模様は公式サイトで写真がご覧いただけますが、見れば見るほどに動きと音がほしくなるところですから(笑)、この放送はバレエファンへの最良の贈り物となるでしょう。

園田隆一郎指揮する東京フィルの演奏(長丁場!)も楽しめましょうから、私も拝見しようと思います。ということでご案内はおしまい。ではまた、ごきげんよう。

2017年5月20日土曜日

読みました:麻耶雄嵩「あぶない叔父さん」

こんにちは。千葉です。
たまには小説も読むのです。仕事にもなんにも関係なく、ただミステリが好きなもので。

●麻耶雄嵩「あぶない叔父さん」


貴族探偵」がまさかのドラマ化で盛り上がる麻耶雄嵩ファンの周回遅れとして(いちおうはメルカトル鮎シリーズなどを過去に愛読していましたが、ちょっと離れていました)、ようやく本書を読みました。
いやあ、麻耶雄嵩だったなあ…で感想を終わらせないとあれこれとネタバレしなくちゃいけなくなる、というかこれでも麻耶雄嵩を知っている人には先入観になる。いやドラマ「貴族探偵」をニ、三話見ていればわかることか…というつまらぬ逡巡を書いた上で。

タイトル通りの小説なんですよ、これ。少し真面目に連作短編の趣向を説明すれば「霧の深さが特徴の田舎町で暮らす高校生たちが遭遇する殺人事件、それを明かす主人公の叔父さん」という趣向が共通の、五つの短編が集められています。田舎の高校生の恋愛事情や、田舎ならではの人間関係などで味付けされているけれど、基本は小味な殺人事件を解決するミステリです。青春小説のテイストが強いかな…
ですが。叔父さんが危ない人なんですよ、本当に。以下本当にネタバレになります。

****************

真相の解明が、基本的に叔父さんの語りの形をとるのですが、その内容が問題で。
彼の語りを真とすれば、叔父さんは探偵じゃなくてあの。とツッコまざるをえない。
もしそれが甥を事件から遠ざけるための嘘だとすれば、事件は終わっていないことになってしまうわけで、それは小説としてどうなのか。”開かれた小説”どころか、そもそも閉じる気がないよ!(笑)っていう。

その辺、麻耶雄嵩だなあと笑って楽しめるか、なにこれ?って怒っちゃうか、何それ意味わかんないって引いてしまうか、反応が分かれるところだろうなあと感じた次第です。私は笑ってましたけど、人に薦めるかと言われるとこのような理由で迷います。そんな短編集でした。

****************



かつて話題に促されて「夏と冬の奏鳴曲」を読んで以来の、長いつきあいとなった麻耶雄嵩がまさかの月九でドラマ化、それも相当に原作を活かした/異化した作りのものが出てきている現実は、正直驚きです。ドラマ、アニメで森博嗣「すべてがFになる」を全力で押したことなども踏まえれば、「本格のフジテレビ」と言ってもいいかもしれない。
世紀の変わり目ころに講談社ノベルスを楽しんでいた私らみたいな人たちが制作側に回ったのだろうなあ、という世代論もできますけれど、かつてのミステリ好きの一人として、素朴に楽しませていただけて嬉しく思っています。願わくは、御手洗潔シリーズがまたTVで見られますように(映画に関してあったらしいトラブル以前の形で、ちゃんと石岡くんがいるやつを、ぜひ)。

では紹介のような個人的な感慨のようなものはこれにておしまい。ごきげんよう。


読みました:ヴォルフガング・シャウフラー「マーラーを語る」

こんにちは。千葉です。
読み終わった本のご紹介です。7月に向かって皆さんも読んでください!(変化球)

●ヴォルフガング・シャウフラー「マーラーを語る ~名指揮者29人へのインタビュー」


副題にありますとおり、29人の名指揮者たちへの、マーラーをめぐるインタヴューを集めたのが本書です。残念ながら本書の刊行前に亡くなられたブーレーズ、アバドやマゼール、そして現役ではメータ、ブロムシュテット、ジンマンのような高齢のマエストロたちから最年少はグスターボ・ドゥダメルまでの29人は”綺羅星の如き”とか紋切り型を口にしたくなるほど錚々たる面々です。そしてですね、なんと「uemahlerinterviews」というYouTubeチャンネルでは、本書に収められたすべてのインタヴューを見ることができます。なんて時代!

そのインタヴューは、いくつかのテーマを設けて行われたものです。それはまとめれば以下のようなもの。

・マーラーとの出会い
・具体的な演奏について
・マーラーが表現したものと20世紀の現実の関係
・マーラーが受けた影響、マーラーが与えた影響  等など…

※項目を正確に、そして全部見たい方は、書店や図書館でお手にとってはじめの数ページをご覧ください

中でもレナード・バーンスタインの影響について、また彼のアプローチについてかなりの紙幅を割いているのが、個人的には驚きでした。比較の問題ではありますが、西欧ではマーラー演奏は一度だって完全に消えたわけでもないだろうに、と思いまして。とは言いながら、やはり表立って「いける曲」扱いされるようになった契機としての”バーンスタインのマーラー”は大きかったのだな、という認識を得たようにも思います。旧全集、久しぶりに聴いてみますかね…
なお、意外なほど自伝的な部分については昔風の理解が多かったように感じます。さらにその自伝と作品を重ねるような見方も。つまるところ演奏を、出てきた音を聴いて判断するので何を言っていようと正直なところかまわないのですが、こうも”悲劇の人マーラー”像を読まされるのには正直辟易しました。偉そうですみません(笑)。
その中では、リッカルド・シャイーが言及していたイタリアの音楽学者Gastón Fournier-Facioの著作は、近年変わりつつある「精力的に活躍し、異例の速さで頂点を極めた当代最高の指揮者」「指揮者としての成功に伴って作曲についても広く受容されていった」という方向で書かれたもののように思えて興味が湧くものでした。邦訳、…出ませんよねえ(笑)。


****************
で、前振りの話に戻ります。えー、本書には我らがジョナサン・ノット東京交響楽団音楽監督も登場しているから、”7月までに”なんですね~おわかりですよね~(くだけすぎ)。

さて気を取り直して。ノット&東響のマーラーは第九、第八、第三と経験を重ねて来ました。今年7月に取り上げるのは交響曲第二番、「復活」です。本書に収められたインタヴューでもこの作品については触れられており、それはちょっと意外にも思える初めて演奏した際のエピソードです。いや、意外ではないのかな、これを考えれば…

ともあれ、よろしければこちらの動画をご覧ください、そして7月にはミューザ川崎シンフォニーホールで僕と握手!(懐かしいネタ←阿呆)



うんうん、ノット監督は全集指揮者だものね、ここに呼ばれる資格十分だよね、(東響でも全集になるまでやってくれないかな、チクルスやるなら何年後かな←やると決めつけてる)などと思いつつご紹介はおしまい。ではまた、ごきげんよう。

※追記。書くかどうかとても迷ったのですが、気にしないのも変であるように思えますので。
あとがきで「小澤征爾へのインタヴューも行う予定だったが取りやめになった」という言及があるので彼がここに登場しないのはわかります。またタイミングの関係で、既に亡くなられたマエストロたちにはお話を伺いようがない。それもわかる、というか当然のことです。また、ニコラウス・アーノンクールのようにマーラー演奏とは縁がなかった方がいないことは仕方のないことです。
ですが、今なお現役で活躍されている二度の全集指揮者、エリアフ・インバルが本書に不在であることに、少なくない当惑が残りました。うーん。

2017年5月19日金曜日

ラ・プティット・バンド 10月来日

こんにちは。千葉です。
来日公演の情報です。

●La Petite Bande Concerts

ラ・プティット・バンドの公式サイトで情報を確認すると、10月9日の大阪公演から21日の福岡まで、日本各地での公演が予定されていることがわかります。大阪(シンフォニーホール)、東京(浜離宮朝日ホール 10/11 10/12)、福島(福島市音楽堂)岐阜(サラマンカホール)福岡(アクロス福岡)の各地をめぐるツアーですが、基本はバッハの管弦楽曲(いわゆる管組と協奏曲)とカンタータを組合せたプログラムです。
※一部リンクを更新しました。チケットの発売情報など、各所で発表され始めています

昨年はOVPP(One Voice Per Part)というアプローチによる「マタイ受難曲」を披露しているから、今度は小規模に思えるかもしれません。けれど、あの時代の「オーケストラ」はなかなか幅広い概念を含有するもの、大編成はまたの機会に、と考えましょうそうしましょう(もしくは、日本で活躍するBCJのようなアンサンブルで楽しみましょう)。

…実際のところ、現在非常に厳しい状況にあるラ・プティット・バンドが来日してくれることはそれだけでも奇跡的なことです。古楽と言われるアプローチを、説得的に示してくれた最初の世代の音楽家たちが次々と鬼籍に入られる中、シギスヴァルトに率いられたアンサンブルがこうして継続的に来日公演を行ってくれる、それだけで応援したくなるのは私だけでしょうか(いやそんなはずはない)。
彼らの状況は、リンク先のファンによる日本語Facebookアカウントが詳しく伝えてくれておりますので、興味のある方は、と言わずぜひご覧くださいませ。



一連の公演の中でも充実しているのが新・福岡古楽音楽祭2017の一連の公演であることはリンク先を開ければ嫌でもわかります。ツアーのメインプログラムはないけれど、独自プログラムを含めてヴァイオリン独奏、弦楽四重奏、そしてハイドンのオペラと三公演もあるだなんて羨ましい、羨ましすぎます。
(東京でも弦楽四重奏はあるのですが、なによりハイドンの「ラ・カンテリーナ」が!!)



私にいわゆる古楽、「作曲された時代のアプローチによる演奏」を教えてくれて、今もなお新鮮な刺激を与えてくれる彼らに、少しでも恩返しがしたく、確定情報が少ない中で記事化させていただきました。
各地の公演が成功しますよう、何かお手伝いできることがあればお声掛けください…

ではまた、ごきげんよう。


2017年5月18日木曜日

読みました:デイヴィッド・マシューズ「ベンジャミン・ブリテン」

こんにちは。千葉です。
これも読み終わった本のご紹介です。

●デイヴィッド・マシューズ「ベンジャミン・ブリテン」


20世紀最大の音楽家の一人、と言っていいでしょうベンジャミン・ブリテン(1913-1976)について、自分は知っているような知らないようなところがあるな、と前から感じていました。
幾つかの作品はスコアも入手して見ているし、その音楽を聴いた経験なら子どもの頃に授業で聞かされた「青少年のための管弦楽入門」から現在まで数十年にもなろうとしている。ショスタコーヴィチやロストロポーヴィチとの交流や、ピーター・ピアーズとの生涯に渡る関係は知っている、でも彼のキャリアにおいて大きい要素であるオペラは、代表作の「ピーター・グライムズ」以外は明確に認識できていないように感じる、さらに作品の年代がどうも…

そんな私が読むべき本でした、デイヴィッド・マシューズによるブリテンの評伝は。
WWI開戦の前年に生まれ、ベトナムが長い戦争の後統一された年に亡くなったベンジャミン・ブリテンが、どんな時代をどのように生きたのか、そのときどきにどの作品を作ったのか。200ページほどでそれを一望できるコンパクトな本書は、私より詳しい人にはブリテンの生涯について整理ができて、私のように彼に詳しくない人にはブリテンを正しくその時代に定位できる、そしてそもそもブリテンについてよく知らない方には最良のガイドとして、彼の作品へのアプローチを助けてくれることでしょう。
神童として早くから活躍を始め、フランク・ブリッジやアーサー・ベンジャミンに導かれ、マーラーやベルク、シェーンベルクを”発見”して熱狂し、…そんな若き日から、「ポール・バニヤン」(1941)、そして何より「ピーター・グライムズ」(1945)に始まるオペラ時代、そして「戦争レクイエム」(1962初演)で誰もが認める作曲家に、そんな彼の生涯のアウトラインに肉をつけてくれる本書に、私から付け加えるべきことはありません。
…だとあまりにそっけないので、以下にいくつかの動画を貼っておきますね。いちおうは年代順、権利的にOKなものだけで用意しました(と書くことで、そうではないものを示唆する質の悪い言い方)。











本書の末尾には充実した年表、作品リストが添えられておりますので、それを参照してから読むのもいいかもしれません。20世紀音楽の、いわゆる”前衛”ではない作曲家では最も活躍した一人について、没後40年だった昨年のうちにもっと聴けていれば…と思う気持ちはありますが、なにきっとこの先もっと演奏されることでしょうよええ。本書を読んでの認識で次に彼の音楽を体験できる日が来ますように、と祈っておきます、できたらオペラが聴けたら嬉しいな。

「青少年のための管弦楽入門」ってブリテンの代表作として紹介するのはちょっとアレだよね、と長年感じていたことを告白してご紹介はおしまい。ではまた、ごきげんよう。


2017年5月17日水曜日

5/17(18)、27「読響シンフォニックライブ」放送

こんにちは。千葉です。
放送予定のご案内、毎月恒例の読売日本交響楽団の演奏会です。

●読響シンフォニックライブ 2017年5月

日本テレビ:2017年5月17日(水) 26:29~(18日(木) 午前2:29~)
BS日テレ:2017年5月27日(土) 7:00~

番組司会:松井咲子

指揮:シルヴァン・カンブルラン
管弦楽:読売日本交響楽団

メシアン:彼方の閃光

この回も全曲放送です。素晴らしい。放送枠を90分に拡大して演奏機会が稀な作品を聴かせてくれます。本当に素晴らしい。今年の一大イヴェントとして注目される「アッシジの聖フランチェスコ」全曲日本初演(それも東京、滋賀で計三回!)を前にカンブルランと読響のメシアンをぜひ、という側面もあるとは思いますけれど、こうしたアイディアが実際に放送として流されることの希少さを思えば、音楽ファンとして素直に喜び受け容れたく思います。ありがたい有り難い。

※参考。今回の全曲日本初演は演奏会形式ですが、カンブルランが指揮したテアトロ・レアルでの舞台が設営されるさまがYouTubeで公開されていまして、そこでこの作品が少し聴けますのでご紹介。…設営っていうか、建築ですねこれ(笑)



日本テレビが映らない皆さまも、ぜひBS日テレで。とご案内してひとまずおしまい。
ではまた、ごきげんよう。

※まだ冒頭しか拝見していませんが、カンブルランのコメントが既に興味深いものですから、ぜひ27日朝のBS日テレでの放送を録画してご視聴ください、とお薦めしておきます。

「四月は君の嘘」舞台化

こんにちは。千葉です。
地上波民放のCMで知った情報なので相当に旧聞ですが。

●舞台「四月は君の嘘」

すでに漫画、それを原作としてアニメ実写映画でも愛されている作品が今度は舞台化です。8~9月とのことです。



訳あって演奏から遠ざかっていたかつてのピアノの神童が、一人の同世代の少女との出会いで変わっていく。そんなボーイ・ミーツ・ガールものですが、個性的なヴァイオリニストには…という展開で世の人々の紅涙を絞った(古めかしい言い回し)本作が、また違う形で多くの人たちに触れられる、いわば”再演”の機会を得たわけですね。

ちなみに実写映画の予告編はこちら。アニメのは、まあたくさんありましたので(いろいろと濁さざるをえない)。

****************

…もしかして漫画やアニメ、ゲームを舞台化するための技術、ノウハウは宝塚と同様に相当の独自進化を遂げているのでは?と世間の評判などから日頃感じているのですが、クラシックのライヴ演奏と芝居をあわせるくらいは余裕なのでしょうか、それともやっぱりかなりのチャレンジなのでしょうか?残念ながら見たことはないのですけれど。興味はあるんですけど、先立つものも時間もね…
残念ながら実際の舞台を拝見したことはないのですけれど、そういう表現の発展には大いに興味があります。ま、先立つものも時間もないんですけどね…

哀しい愚痴にたどり着いてしまったのでご紹介はここまで。
ではまた、ごきげんよう。


読みました:辻田真佐憲「日本の軍歌」

こんにちは。千葉です。
また読み終わった本のご紹介です。珍しく多読モードです。

●辻田真佐憲「日本の軍歌 ~国民的音楽の歴史」


「軍歌を見れば、日本がわかる」を題されたWeb連載をお読みいただければ、だいたいのところは本書の言わんとする事が伝わるのではないでしょうか。もちろん、アウトラインはあくまでアウトライン、本書の情報量はそれだけに収まるものではありません。新書ながら「軍歌」に絞ってその誕生から戦後の小休止、そして現在にもある可能性としての「軍歌」まで考えさせてくれる一冊でした。

新聞社の企画として「海道東征」のリヴァイヴァルが進められている現在のうちに、本書を読むなり上述の連載コラムを読むなりしてそれぞれに考えておくのもいいかもしれません(「海道東征」コンサートのアンコールでは本書でもその成り立ち、受容が語られる「海ゆかば」が歌われていると聞きますし)。国民的アイドルが「キミとボクの物語」として新世紀軍歌を歌いだしてからではもう考える時間はないでしょうから。

柄にもない予言はこのへんで止めておきましょう。ではまた、ごきげんよう。

2017年5月16日火曜日

佐藤俊介、オランダ・バッハ協会の次期音楽監督に決定

こんにちは。千葉です。
オランダの音楽団体の重要なポストに、若き日本人音楽家が就任する、というお知らせです。

●SHUNSKE SATO NIEUWE ARTISTIEK LEIDER NEDERLANDSE BACHVERENIGING

現在もオランダ・バッハ協会のコンサートマスターを務めている佐藤俊介が、2018年シーズン(6/1開始)から音楽監督に就任する、という発表です。現在音楽監督を務めるヨス・ファン・フェルトホーヴェンの後を継ぎ、2021/22年シーズンに100周年を迎える同協会を率いていく重要なポストに就任するわけですね。

このアンサンブルは来日公演もしていますし、それを知らずとも少なくないクラシック音楽ファンがこの団体を知っているはず。ネットで情報を集めている方なら、きっとこのサイトを何かしらの形でご覧になっているのでは。
>ALL OF BACH - a project by the Netherlands Bach Society
「協会の100周年を迎えるにあたって、バッハの全作品を演奏し録音する」この壮大なプロジェクトを、彼が音楽監督として引き継いで完成させる立場になるわけですから、彼への高い評価も察せられるというものでしょう。

以前に一度、三鷹市芸術文化センターでの公演を聴かせていただいた際にもその実力と才気に感心した佐藤俊介の、さらなるご活躍に期待します。またその音楽に触れられる機会が来ますように。


この発表に先立って示された翌シーズンのプログラムでも、彼が演奏しているところをご覧になれます。


2013年のコンサートでもコンサートマスターとして演奏していますね。


2015年の「マタイ受難曲」より。

以上お知らせでした。ではまた、ごきげんよう。

読みました:フランツ・バルトロメイ「この一瞬に価値がある ~バルトロメイ家とウィーン・フィルの120年」

こんにちは。千葉です。
読み終わった本のご紹介です。

●この一瞬に価値がある ~バルトロメイ家とウィーン・フィルの120年


三代にわたってウィーン国立歌劇場、そしてウィーン・フィルで活躍する音楽家一家の三代目バルトロメイ(その書き方いけない)による一族の歴史を語る本です。それはそのまま、当事者による120年以上にわたるウィーンの音楽史の一コマでもあるわけです。これは本当に興味深いものでした。

初代はクラリネット奏者として、ボヘミアのチェコ語地域からウィーンに転じてマーラーの時代に(!!)国立歌劇場、そしてフィルハーモニーで活躍することになります。ちなみにマーラーはドイツ語地域の出身なので、同胞意識ではなく演奏の技量において選ばれたと考えていいでしょうね。彼の系譜がオッテンザマー父子にまで続く、ウィーンのクラリネット演奏の伝統を作っているというのですから、生ける歴史なのです、バルトロメイ家は。

二代目はヴァイオリニストとしてフィルハーモニーの副団長をも務め、後ウィーン交響楽団の監督としても活躍されたという異色のキャリアの持ち主です。その演奏活動、キャリアも興味深いのですが、彼の場合はその生きた時代が二つの大戦に、そして冷戦期に重なるものだから否応なく歴史をめぐる物語としても読めてしまうのが、彼個人には本当に大変だったろうと思いつつも興味深く勉強になります。たとえば、彼が敗戦直前にウィーンを離れていたことをもってナチ党員排斥の対象として選ばれてしまうあたり、トーマス・マンやエーリヒ・コルンゴルトに対する戦後の反応を思い出させられるものです。もっと大物のナチ党員も所属しているのに(戦後も!!)、入団のため一時的に入党した彼が団を追われる羽目になるのだから、戦後処理とは悩ましいものです。そのあたり興味のある方はぜひ本書をご覧ください。

そして著者である三代目、チェリストのフランツ・バルトロメイは1970年代から2012年までウィーン国立歌劇場、そしてフィルハーモニーで活躍されたわけですから、彼の活動時期は日本のクラシック音楽ファンが「ウィーン・フィルハーモニーの演奏」として聴いてきたもののほとんどの時代をカヴァーすることでしょう。カラヤンが来たり来なかったり(笑)した結果ベームが復帰して、またバーンスタインがよく来るようになって、たまーにカルロス・クライバーが登場して…といった時代から、サー・サイモン・ラトル、ニコラウス・アーノンクールらとの仕事までを当事者として振り返ってくれています。本書のタイトルもまたアーノンクールの言葉で、バルトロメイ氏がもっとも感銘を受けたものだと言うのですから本当に最近までご活躍された方なのだと思わざるを得ません。
そんな彼が語るマエストロたちの話は実に興味深く(以下繰り返し)。

さらに繰り返しになりますが、私ごときがどうこう書くより、興味のある方には本書を読んでいただくのが一番いいと思いますので、紹介はこれでおしまいです。最後にフランツ・バルトロメイの演奏をお楽しみくださいませ。



ではまた、ごきげんよう。

2017年5月15日月曜日

アンサンブル・アンテルコンタンポラン、創設40周年

こんにちは。千葉です。
いささか旧聞ではございますがニュースを一つ。

●L'Ensemble Intercontemporain à l'avant-garde depuis 40 ans

記事の日付としては3月17日なので、あきらかに旧聞です。ですがこんな動画を発見してしまうと紹介しておかないのもイカンかなと思うわけです。



アンサンブル・アンテルコンタンポランが創設40周年を迎えて開催したコンサート、なんと三時間半に及ぶ祝祭です。素晴らしい。

挨拶に続いて冒頭で演奏されるベリオ、クセナキスあたりは「20世紀音楽」という括りに入る作品群ですが、このアンサンブルがそれらの作品の歴史を生み出してきたことを踏まえて考えれば十分以上に「現代」の音として響きます。アンサンブル・アンテルコンタンポランのYouTubeでの展開は、本当に大歓迎です。

…もちろん、こうした作品と縁のある団体による再演はありがたい一方で、”正典”として作品受容を限定しかねない面はあります。ですが演奏頻度が低く、実演に触れられる可能性が低い作品の場合こうして実演の映像に触れられることのメリットのほうがよほど大きいので、ここではその可能性を指摘しつつ、うかうかと楽しく配信されたパフォーマンスを楽しませていただこうと思います。皆様も是非。知らない音楽に触れられるのって楽しいですよ?ライヴパフォーマンスとしての「現代音楽」、かっこいいんですから。

これではさすがに長過ぎて、という方には「ブーレーズ音楽論」で展開された思考の成果として生まれたアンサンブルの、代名詞的作品として彼の「レポン」を、現在の音楽監督マティアス・ピンチャーが指揮したものを置いておきますね。1995年のあのフェスティヴァルのころは、ライヴエレクトロニクスの駆使とかそれだけでワクワクできたなあ…(遠い目)


****************

…では、おまけにもう一つ、私からかってに懐かし映像をば。いや、「かってに」とは申しましたがちゃんとアンサンブル・アンテルコンタンポランの公式サイトからの提供です。YouTubeにはなかったのですが、リンク先で御覧いただける若いマエストロ、どなただと思いますか?

はい、20年前のジョナサン・ノットです。あまり多くの方が触れないのでときどき不安になるのですが、彼を語る上でこのアンサンブルの音楽監督を務めていた(2000-2005)ことは重要なポイントだと考えています。それ故に幅広い時代の作品を絶妙に組合わせるプログラムができるのでは、と。
もちろんそれだけがノット監督の強みではないけれど、昨年オペラを披露して手持ちのカードをほぼ示してくれた今、改めてアンテルコンタンポランとのつながりを指摘しておくことにも意味はあるのかな、と感じるオペラシティシリーズ後の私でありました。

では紹介はここまで。ではまた、ごきげんよう。

※追記。アンサンブル・アンテルコンタンポランで長く活躍されているピアニスト、永野英樹さんが7月4日に横浜みなとみらいホールで興味深いプログラムを披露します。詳しくはリンク先にてご確認くださいませ。


2017年5月14日日曜日

5/14(15)「フランクフルト歌劇場公演 歌劇『クセルクセス』」放送

こんにちは。千葉です。
放送予定のご案内、日曜深夜の人気番組「プレミアムシアター」(少し盛った)、14日深夜24時20分(15日未明0時20分)からの放送はこちら。

●フランクフルト歌劇場公演 歌劇『クセルクセス』



フランクフルト歌劇場の「クセルクセス(セルセ)」がこの日の番組です。

バロックピッチによる演奏、気になって少し調べてみると、ここのオーケストラはバロックから現代まで、幅広く対応する模様。バロックオペラを異化したスタイルで上演するのがもう長く続く”伝統”のようになっているドイツの歌劇場らしく、作品の時代に応じてやり方を変えているのかもしれません(もっともFrankfurter Opern- und Museumsorchesterという名称から読み取れるものはそう多くないのですが)。ちなみにDVDもリリースされている「リング」はこんな感じ。



…並べてもあまり察しようがないので(笑)、とりあえず先入観をもたずに視聴させていただこうと思います。以下、キャストとスタッフです。

キャスト:

セルセ(クセルクセス/ペルシャ王):ガエル・アルケス
アルサメーネ(セルセの弟):ローレンス・ザゾ
ロミルダ(アルサメーネの恋人):エリザベス・サトフェン
アマストレ (セルセの婚約者):ターニャ・アリアーネ・バウムガルトナー  ほか

指揮:コンスタンティノス・カリディス
演出:ティルマン・ケーラー
美術:カロリ・リズ
衣装:ズザンネ・ウール
照明:ヨアヒム・クライン
管弦楽:フランクフルト・ムゼウム管弦楽団

2017年1月12、15日にフランクフルト歌劇場で上演されたものです。ではご案内はここまで。

海外のものも小さいタイムラグで放送されるようになって喜ばしいことです。
…と書いてから「往年の演奏とかはもうどこでも放送できない感じでしょうか…」とも思ってしまう私でありました。ではまた、ごきげんよう。

5/14「N響 第1857回 定期公演」放送

こんにちは。千葉です。
放送予定のご案内、14日 21時からのEテレ、クラシック音楽館はこの週もパーヴォ・ヤルヴィとN響の定期公演、欧州ツアー前の演奏会です。

●<N響 第1857回 定期公演>

指揮:パーヴォ・ヤルヴィ
ヴァイオリン:諏訪内晶子 ※
管弦楽:NHK交響楽団

シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 Op.47 ※
ショスタコーヴィチ:交響曲第一〇番 ホ短調 Op.93

ツアーでショスタコーヴィチの第一〇番を演奏する、というのはノット&東響と同じ選曲です。オーケストラの機能を示すことができること、そして”伝統外”の団体として欧州に御目文字する際の選曲として妥当に思われること、そのあたりが理由でしょうか。
そんな詮索はさておいて、造形感覚がたしかなパーヴォさんのショスタコーヴィチはキレッキレの演奏だったのでしょう。期待します。
前半はツアーとは違ってソリストに諏訪内晶子を招いたシベリウス。前週に演奏/放送された交響曲第二番もいい演奏でしたから、これまた期待します。
2017年2月17日、NHKホールでの演奏会です。

以上ご案内でした。ではまた、ごきげんよう。

2017年5月11日木曜日

METライブビューイング「イドメネオ」 5/12より上映

こんにちは。千葉です。
オペラの劇場上映のご案内、おなじみのMETライブビューイングの次作です。5月12日から上映が開始されるのはこちらの作品。

●METライブビューイング「イドメネオ」











>海外評1 >海外評2 >海外評3

モーツァルトの最も有名な幾つかのオペラに比べれば知名度は落ちるけれど、オペラセリアの傑作として再評価が進み近年は上演も増えている「イドメネオ」が、ジェイムズ・レヴァインの長きにわたるメト時代の集大成となります。ジャン=ピエール・ポネルの演出は今やオットー・シェンクやフランコ・ゼッフィレッリのそれと同じ、メトの歴史の一部でしょう。
ギリシャ神話の時代、トロイア戦争後の物語はモーツァルトの生涯に大きく影響した父子ものでもありますので、この機会にぜひ、と申し上げておきますね。

ではまた、ごきげんよう。

2017年5月7日日曜日

5/7「N響 第1856回 定期公演」放送

こんにちは。千葉です。
放送のご案内です、7日の21時からEテレでのクラシック音楽館です。

●<N響 第1856回 定期公演>

指揮:パーヴォ・ヤルヴィ
アコーディオン:クセニア・シドロヴァ
管弦楽:NHK交響楽団

アルヴォ・ペルト:シルエット -ギュスターヴ・エッフェルへのオマージュ
トゥール:アコーディオンと管弦楽のための「プロフェシー」
シベリウス:交響曲第二番 ニ長調 Op.43

2017年の2月といえば、NHK交響楽団が創立90年を記念した欧州ツアーを行った月です。最近朝日新聞でもその紹介が、東京交響楽団のそれと併せる形でされていましたし、なによりベルリンでの演奏会が既に放送されていますから、その充実はご存じの方も多いでしょう。そのツアーを前にしたパーヴォさんの定期がこの回から続きます(ツアー前のマーラーは特別演奏会枠だったので、ここでの放送はなし)。
この週はエストニア出身のパーヴォさんには特に身近な作曲家たちの作品を揃えたプログラムですね。SNSでの評判も非常に良かったと記憶していますので、楽しみな放送です。
演奏会は11日、NHKホールでのものです。


なお直近のパーヴォさんの仕事がこちら。「ドン・ジョヴァンニ」でオペラデビュー前に、ということでしょうかミラノ・スカラ座バレエに登場しています。

これが放送されたら黄金週間も終わりですね、とか特に感慨もなく言ってみました。ではまた、ごきげんよう。

※追記。録画したものを拝見して、しみじみと「パーヴォさんは造形が美しいなあ」と感じました。特にシベリウス、演奏前のトークでも語っていた旋律とシンコペーションの関係がこうきれいに聴こえてくれると実に気持ちがいい。シベリウスではシンコペーションの扱いがひとつの勘どころにもなりますので、これはなかなかいいなと感じた次第ですよ。あまり多くは演奏されない作品、たとえば三、四、六番あたりでいい演奏が期待できそうな気がします。あ、この演奏がどうこう、ということではないですよ(形のきれいな第二番、最近聴いたパーヴォ&N響では一番好きかもしれません、私。そして随所に見られる強い思い入れ(まさかのバーンスタイン風一本振りまで!)、名演ではないでしょうか)